ミリ波帯域の28GHz帯では、従来の電子デバイスパッケージ技術とは異なる、独自のパッケージ技術が使われる。
例えば28GHz帯の送受信を扱う「フロントエンドモジュール(FEM:Front End Module)」は、3次元構造の3D SiPとなる。モジュール基板の両面に送信用パワーアンプや受信用低雑音アンプ、集積化受動素子、スイッチ、位相シフタなどを搭載する。これらの部品は、はんだバンプでモジュール基板にフリップチップ接続される。既存のチップインダクターやチップコンデンサーなどの受動部品は、あまり搭載されない。モジュール基板の配線によって受動素子を形成する。モジュール基板の材料には、低温同時焼成セラミック(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)、ガラス、有機材料などがある。
28GHz帯で重要なのは、絶縁材料の選択である。比誘電率は3.0以下、誘電正接は0.01以下、吸水率は0.1%以下であることが望ましい。厚みは10μm前後である。配線に対しては幅のばらつきに対する制限が厳しくなる。±3%〜±5%以内に抑えたい。
さらに5Gでは、アンテナをFEMと一体化することが考えられている。4G/LTE移動通信システムではアンテナとFEMをフレキシブルプリント基板で接続していた。しかし28GHz帯の5Gではプリント基板の配線による電気的な損失が無視できない。また28GHz帯では波長が短くなるのでアンテナが小さくなることも、一体化には有利に働く。
このため、アンテナとFEMを積層した「AiP(Antenna in Package)」と呼ばれるSiPが開発され、実用化が始まっている。
第5世代(5G)の移動通信システム用SiPの構造。上はFEM(フロントエンドモジュール)の例。モジュール基板の材料はガラス。下はFEMとアンテナを積層したAiP(Antenna in Package)の例。アンテナの基板材料はガラス。出典:JEITA(クリックで拡大)(次回に続く)
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