欧州は、オプティクスやフォトニクスなどの、複雑なシステムや最先端パッケージングに対する需要の高まりを受け、製造およびパッケージング関連の価値連鎖を維持しながら活性化させることができるのだろうか。EUの「Applause」プロジェクトは、フォトニクスやオプティクス、エレクトロニクス向けに低コスト製造を実現するための最先端パッケージング技術を提供するという、欧州の野心を示している。
欧州は、オプティクスやフォトニクスなどの、複雑なシステムや最先端パッケージングに対する需要の高まりを受け、製造およびパッケージング関連の価値連鎖を維持しながら活性化させることができるのだろうか。EUの「Applause」プロジェクトは、フォトニクスやオプティクス、エレクトロニクス向けに低コスト製造を実現するための最先端パッケージング技術を提供するという、欧州の野心を示している。
IoT(モノのインターネット)の登場により、コネクティビティの高速化や、センサーの高性能化に対する需要が生み出された。求められる性能を達成するために、1つのパッケージ上に複数の半導体チップと、光センサーや光インターコネクトも併せて搭載されるようになった。コンポーネントのヘテロジニアス化が進むと、複雑性が増して、最終的にはパッケージそのものがシステムの重要な一部となる。その機械的挙動や電磁気的挙動、熱挙動は、システム全体の性能や信頼性、コストなどに影響を及ぼす。
ICOS Vision Systems(KLA-Tencorにより買収)のApplauseプロジェクトコーディネーターで、研究開発広報渉外担当マネジャーを務めるMoritz Stoerring氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「ヘテロジニアスインテグレーションは、非常に重要な課題だ。ウエハーをダイに切り分け、ダイを1個1個取り出してパッケージに収めていくのが通常のパッケージングプロセスだが、WLP(Wafer Level Packaging)では、1枚のウエハーごと大藩のパッケージングプロセスが行われる。われわれは、こうしたプロセスをさらに発展させて、フォトニクス/光インタフェースをプロセスに統合しようとしている」と説明する。
Applauseプロジェクトは、ICOS Vision Systemsが調整役を務め、11カ国から31社のパートナー企業が参加している。その内訳は、12社が大企業、11社が中小企業、8社が研究技術組織(RTO:Research and Technology Organization)である。総予算は3400万ユーロ(約41億5200万円)で、ECSEL(Electronic Components and Systems for European Leadership)合同事業の一環として、EUの研究革新プログラム「EU Horizon 2020」の他、ベルギーやドイツ、オランダ、フィンランド、オーストリア、フランス、ハンガリー、ラトビア、ノルウェー、スイス、イスラエルといった国々の資金提供機関や産業界などが、共同で資金を提供している。
Stoerring氏は、「この3カ年計画のApplauseプロジェクトは、欧州が、センサー研究および技術開発の分野で最前線に立ちたいという野心を抱いていることを示している。光センサーや光インターコネクトのさらなる高効率化と小型化を実現したい考えのようだ。欧州は現在、センサー分野において成功を収めている。加速度計やジャイロスコープ、照明、カメラ、圧力、RF MEMSなど、さまざまな種類のMEMSが欧州で開発、製造されている」と述べている。
Applauseプロジェクトは、エレクトロニクスやオプティクス、フォトニクスなどを組み合わせた、最先端のパッケージングおよびアセンブリ技術の実現に焦点を当てている。参画メンバーは、「量産が可能な低コストのマニュファクチャビリティ(製造可能性)を実現する」という目標を掲げ、新しい手法やプロセス、ツールなどを開発していく予定だ。
プロジェクトでは、重要な技術的ビルディングブロックの範囲内で、超薄型ウエハーや、ダイハンドリング/パッケージングソリューション、高精度フォトニックパッケージングの他、高精度な光コンポーネントや医療、生体適合性のあるフォトニックパッケージングなどに向けたボンディング技術、モールディング、光コンポーネント製造向けの3Dインテグレーションなどの開発に取り組んでいく。
さらに、試験コンセプトや試験装置プラットフォーム、故障解析などを開発しながら、デバイスの小型化とアラインメント仕様の強化にも同時に取り組んでいく予定だという。参画メンバーは、オプティクス向けに量産が可能な低コストの製造能力を実証するための取り組みや、最先端パッケージング技術に向けた計測方法やツールの定義なども進めていく。
さまざまな技術が、複数の産業ユースケースにおいて適用される予定だ。
1つ目のユースケースは、オーストリアamsが開発した、モバイル/ウェアラブルアプリケーションに向けた3D(3次元)積層の超小型環境光センサーだ。2つ目は、Integrated Detector Electronicsが開発した、自動車および監視用途向けの高性能、低コストな非冷却熱IRセンサー。3つ目は、イスラエルのDustPhotonicsが開発を手掛ける、低コストの高速データコムトランシーバーである。
医療分野の面では、Precordiorが心臓モニタリング向けのフレキシブルパッチの開発を、Cardiaccsが侵襲が最小限に抑えられた小型心臓センサーの開発を、それぞれ手掛けている。
NASAが開発した技術成熟度レベル(TRL:Technology Readiness Level)は、プログラムの取得段階において技術の成熟度を推測するための手法である。TRLは、1〜9までの評価基準があり、9が最も成熟度の高い技術レベルとされている。Stoerring氏は、「Applauseプロジェクトは、ユースケースにもよるが、5〜7の間の評価を得ている」と述べる。
一方で同氏は「現在進められている開発は、基礎研究ではなく、製品化の実現を目指している。こうした取り組みには、ある程度のリスクも生じるため、ユースケースの実用化の目途について述べるのは難しい」とも指摘した。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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