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インテル、困ってる? 〜プロセッサの供給不足は、いつ解消されるのか?湯之上隆のナノフォーカス(21)(2/4 ページ)

» 2020年01月16日 11時30分 公開

プロセッサの出荷額と出荷個数の動向

 図3に、1991年Q1〜2019年Q3までの四半期ごとのプロセッサ(MPU)出荷額および出荷個数の推移を示す。プロセッサの出荷額と出荷個数の挙動は、おおむね一致しているように見える。ITバブルが崩壊した2001年以降、リーマン・ショックの一時的な落ち込みを除けば、出荷額も出荷個数も右肩上がりに増大していき、2011年頃にピークアウトする。

図3:四半期ごとのプロセッサの出荷額と出荷個数(〜2019年Q3) DRAMeXchangeのデータを基に筆者作成(クリックで拡大)

 これは、2007年にAppleが「iPhone」を発売したことをきっかけとして、世界的にスマートフォン(スマホ)が普及していき、PCの出荷台数が2011年にピークアウトして駆逐されていったからであろう(図4)。そのスマホの出荷台数も、2016年にピークアウトし、年々出荷台数が減少している。

図4:PCおよびスマートフォンの出荷台数 ガートナーおよびIDCのデータを基に筆者作成(クリックで拡大)

 さて図3に戻ると、Intelが10nmプロセスの立ち上げに失敗した2016年以降、プロセッサの出荷額と出荷個数の挙動が乖離していく。出荷額は小刻みに上下動しながら増大しているように見える。一方、出荷個数は大きく減少していく。

 出荷個数が減少しているのに、出荷額が増大しているのは、プロセッサの価格が高騰しているからであろう。半導体の価格は需要と供給のバランスで決まる。世界的にプロセッサが足りないから、プロセッサ価格が高騰しているというわけだ。

 以下では、2015年〜2019年に焦点を当てて、さらに詳しく見てみよう。

Intelの微細化とプロセッサの出荷個数

 Intelは、2年ごとに30%の微細化を進めてきた。そして、微細化を行わない年は、プロセッサの基本設計を刷新した。このようにして、微細化を進める年(チック)と新しい基本設計を行う年(タック)を交互に繰り返し、毎年新しいプロセッサをリリースしてきた。これを、「チック・タックモデル」と呼んでいた。

 この「チック・タックモデル」は、2015年の14nmまではうまくいっていた(図5)。ところが、2016年に10nmプロセスが立ち上がらなかったため、このモデルは崩壊した。2016年以降、Intelは、14nmの第2世代(14nm+)や第3世代(14nm++)のプロセスを使い、基本設計を頻繁に刷新して、新しいプロセッサをリリースしている。

図5:Intelの微細化の状況と四半期ごとのMPU出荷個数 電子デバイス産業新聞 副編集長 稲葉雅巳「Intelを阻む微細化の壁、10nm量産を再延期(2018年5月15日)」およびWSTSのデータなどを基に筆者作成(クリックで拡大)

 この間、Intelは何度も「10nmプロセスの立ち上げに目途(めど)がついた」というような発表を繰り返したが、その期待は裏切られ続けた。2019年5月にもIntelは、「10nmプロセッサを6月に出荷できる見込み」と発表していたが(関連記事:「Intelが7nm開発にメド、2021年に市場投入を予定」)、それが実現している気配はない。

 そして10nmプロセスの立ち上げより問題なのは、プロセッサの出荷個数の減少である。2016年Q3に1.36億個を出荷した後、上下動しながら減少していき、2019年Q1にはピーク時より4800万個少ない8800万個になってしまった。その後、2019年Q3に9800万個に回復しているが、まだピーク時より3800万個少ない。

 何度も言うが、Intelは2年連続150億ドル規模の投資を行っており、14nm工場はフル稼働状態のはずである。にもかかわらず、なぜ、プロセッサの出荷個数がこれほど少ないのか?

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