Intelの苦境に付け込んで、AMDがプロセッサのシェアを拡大している(図6)。2016年Q3に最大82.5%を占めていたIntelのシェアは、2019年Q2に76.9%まで落ち込んでいる。一方、AMDは、2016年Q3の17.5%から2019年Q2に23.1%までシェアを増大させている。
しかし、Intelのプロセッサの供給不足分をAMDが埋めてくれているなら、世界的に4800万〜3800万個もプロセッサが不足するという事態にはならないはずだ。従って、プロセッサの供給不足の責任は、やはりIntelにあると言わざるを得ない。
その原因を示唆する記事が、マイナビニュース『Intel CPUはなぜ不足しているの? - 14nmプロセスの状況から解説する』(大原雄介、2019年4月30日)にあった。
この記事には、Intelの14nm+や14nm++プロセスで製造されているプロセッサのチップサイズと12インチウエハーからの有効取得数が記載されていた(表1)。
前掲記事によれば、Kaby Lake、Coffee Lake、Coffee Lake Refreshのコア数は、それぞれ、4個、6個、8個であり、コア数の増大に従って、チップサイズが、それぞれ、126mm2、152mm2、178mm2と大きくなる。なお、Kaby Lake、Coffee Lake、Coffee Lake Refreshは、Intelのプロセッサの開発コードネームである。
そして、チップサイズの増大とともに、12インチウエハーから取得できる有効チップ数が、それぞれ、509個、411個、344個と減少する。
ここから先は筆者の推定であるが、まず、歩留りを90%と仮定すると、12インチウエハーから取得できるチップ数は、Kaby Lake、Coffee Lake、Coffee Lake Refreshで、それぞれ、458個、370個、310個となる。
さらに、14nm工場の月産キャパシティーが10万枚と仮定すると、Kaby Lake、Coffee Lake、Coffee Lake Refreshの取得数は毎月、4580万個、3700万個、3100万個となる。すると、四半期では、それぞれ、1億3740万個、1億1100万個、9290万個生産できることになる。
上記の結果から(いくつも仮定は設けたが)、四半期で1億3740万個生産できるKaby Lakeに対して、Coffee Lakeは2650万個少ない1億1100万個となり、Coffee Lake Refreshは4460万個少ない9290万個となった。
かなり大ざっぱな計算ではあるが、プロセッサが四半期で4800万個減少した原因の一つは、Intelのチップサイズの増大が関係しているのは確実であろう。
ただし、AMDにシェアを侵食されていることを考慮すると、この計算結果ほどにはIntelはプロセッサを出荷できていないと考えられる。
2016年にIntelが14nm+でKaby Lakeを出荷していた時期には、世界全体の四半期で1.36億個のプロセッサが出荷されていた。その後、Intelの14nm工場はフル稼働状態を維持しながら、かつ、2018年から2年連続で150億ドル規模の投資を行っている。にもかかわらず、プロセッサの出荷個数は激減しているのだ。
ここから導き出される結論は、前掲記事の著者の大原雄介氏も書いているが、「14nm++プロセスの歩留りが恐ろしく悪い」ということではないか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.