プロセッサの供給不足がまだ続いている。一向に解消されず、Intelの幹部が謝罪コメントを掲載する事態となっている。何が問題なのだろうか。
2016年4月から爆発的に成長したメモリ市場は、2018年9月にピークアウトし、2019年はメモリ大不況の1年となってしまった。しかし、メモリ市場動向をみると、2019年Q3に底打って回復に転じているように見える(図1)。
ここでメモリ価格の動向を見てみると、128G NAND型フラッシュメモリ(MLC)の大口取引価格は2019年6月頃から上昇に転じているが、8G DRAM(DDR4)の大口取引価格は2019年12月時点でも下がったままである(図2)。DRAMのスポット価格が上がったというニュースもあるが、大口取引価格が上昇してこない限り、本当に「メモリ不況が明けた」とは言えないだろう。
そのためには、Intel(インテル)に何としても10nmプロセスを立ち上げてもらいたい。というのは、Intelの10nmプロセスが立ち上がらないため、14nm工場が過密状態となり、プロセッサの供給不足を招いたと推論したからだ(拙著記事『Intel 10nmプロセスの遅れが引き起こしたメモリ不況』(EE Times Japan、2018年12月7日)。
そのIntelは、14nmの増強を行うべく2018年10月28日に10億米ドルの追加投資を発表した。その結果、2018年の投資額は150億米ドルとなり、さらに2019年も155億米ドルと過去最高の設備投資を行った。
ところが、IntelのExecutive Vice Presidentを務めるMichelle Johnston Holthaus氏は2019年11月20日、PCメーカーやクラウドメーカーなどプロセッサのカスタマー関係者に宛てた書簡「Intel Supply Update」で、プロセッサの供給不足を謝罪するとともに、ファンドリーを活用してプロセッサの供給量を増強することを公表した。TSMCに加えて、Samsung Electronicsにも、生産委託を行うとみられる。
しかし、なぜ、プロセッサの供給不足が解消されないのか?
2018年から2年連続で150億ドル規模の設備投資を行い、14nm工場はフル稼働しているはずである。にもかかわらず、Intelの幹部が異例の謝罪を行い、外部の複数のファンドリーに生産委託するという異常事態に陥っている。
10nmプロセスの立上どころか、14nmのプロセッサすら、需要に応える供給ができていないわけだ。本当に、「インテル、困ってる」としか言いようがない。
本稿では、まず、プロセッサの供給不足の実態を明らかにする。次に、なぜ、プロセッサの供給不足が起きたのかを定量的に分析する。さらに、プロセッサの供給不足が解消され、メモリ不況が明けるには、1〜2年必要かもしれない推論を述べる。
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