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インテル、困ってる? 〜プロセッサの供給不足は、いつ解消されるのか?湯之上隆のナノフォーカス(21)(4/4 ページ)

» 2020年01月16日 11時30分 公開
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メモリ不況はいつ明けるのか

 プロセッサ(MPU)、DRAM、NANDフラッシュの四半期ごとの出荷個数の推移を見てみよう(図7)。前節までに、プロセッサの出荷個数が2016年Q3(1.36億個)から2019年Q1(8800万個)にかけて4800万個減少したことは、くどいほど述べた。

図7:四半期ごとのMPU、DRAM、NANDフラッシュの出荷個数(〜2019年Q3) WSTSのデータを基に筆者作成(クリックで拡大)

 2016年は、Intelが10nmプロセスの立ち上げに失敗した年であるとともに、メモリ市場が爆発的に成長し始めた年でもある。しかし、図7から分かる通り、DRAMの出荷個数は2018年Q3に至るまで約40億個前後を推移しており、ほとんど増えていない。また、NANDフラッシュも2016年Q1の25億個から2018年Q3に1.2倍の30.5億個になっただけで、5.5億個しか増えていない。

 DRAMでは、3社に集約されたSamsung Electronics、SK hynix、Micron Technologyが、需要を供給が上回らないように生産調整をしていたと思われるため、出荷個数が増えないのは理解できる。しかし、「作っても作っても足りない」という印象があったNANDフラッシュがたった1.2倍にしかなっていないのは、拍子抜けする思いである。

 結局、”スーパーサイクル“と言われたメモリ市場の爆発的な成長と崩壊は、図2に示した通り、「DRAMとNANDフラッシュの価格の高騰と暴落」以外何物でもない。要するに、”スーパー“に価格が”高騰したり暴落したり“しただけの話である。

 そして、再びメモリ価格が高騰するのはいつなのか?

 2019年Q1に8800万個だったプロセッサは、同年Q3に9800万個になった。つまり、半年で1000万個増えたことになる。2016年Q3に記録した1.36億個に回復するには、さらに4000万個ほど増大する必要がある。半年で1000万個増のペースなら2年かかる計算になる。

 米Gartnerが2020年1月14日に発表した2019年の半導体メーカー売上高ランキングで、2017年と2018年に首位だったSamsung Electronicsに替わって、3年ぶりにIntelが1位に返り咲いた(日経新聞1月15日)。しかし、14nm++プロセスの歩留りを向上させ、2018年から2年連続で150億米ドル規模の設備投資が奏功し、失敗続きだった10nmプロセスを立ち上げて、プロセッサの供給不足を完全に解消しなければ、Intelを真の盟主ということはできないだろう。

 世界がIntelに注目している。頑張れ、インテル!

(次回に続く)

⇒連載「湯之上隆のナノフォーカス」記事一覧

筆者プロフィール

湯之上隆(ゆのがみ たかし)微細加工研究所 所長

1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(原子核工学専攻)を修了後、日立製作所入社。以降16年に渡り、中央研究所、半導体事業部、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士取得。現在、微細加工研究所の所長として、半導体・電機産業関係企業のコンサルタントおよびジャーナリストの仕事に従事。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)。


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