AR(拡張現実)/VR(仮想現実)技術が大きく成長を遂げてきたことを受け、製造業者は、製造開発やトレーニング、メンテナンス、修理、作業者の安全性など、さまざまな分野への導入方法を模索している。250億米ドル規模のEMS(電子機器製造受託サービス)プロバイダーであるFlexは、その対象となる分野をさらに拡大していく考えだ。
AR(拡張現実)/VR(仮想現実)技術が大きく成長を遂げてきたことを受け、製造業者は、製造開発やトレーニング、メンテナンス、修理、作業者の安全性など、さまざまな分野への導入方法を模索している。250億米ドル規模のEMS(電子機器製造受託サービス)プロバイダーであるFlexは、その対象となる分野をさらに拡大していく考えだ。
AR/VRは、製造業界にとって極めて重要な技術であるため、Flexは、同社のインダストリー4.0戦略における6つの重要な柱の1つとしている。同社は、M2M通信、スマートオートメーションおよびロボティクス、AR/VR、3Dマニュファクチャリング、シミュレーションと可視化、BI(ビジネスインテリジェンス)を利用することにより、グローバルな製造プロセスを強化し、カスタマーソリューションを提供していくことに力を入れている。
FlexでXR/シミュレーションエンジニアリングマネジャーを務めるZohair Mehkri氏は、「AR/VRは、当社だけでなく、業界全体に大きな影響を及ぼす技術であり、設計やユーザビリティ、製品ライフライクル管理などの分野で重要な役割を担っている。ユースケースについては、その製品がライフサイクルのどの段階にあるのかによって決まる。AR/VRはひとまとめにされることが多いが、製品開発の面では本質的に異なっている」と述べる。
EMS企業は、エレクトロニクスサプライチェーンの中ではユニークな位置付けにある。Flexが世界各国100カ所に保有している製造施設は、ODM/OEMメーカーにアウトソーシングしている。EMSメーカーは、製造サービスだけでは利益率が非常に低いため、設計補助やプロセス改善、アフターマーケットサービスなどの付加価値を付けている。
Manatt Digital Mediaによると、AR/VR技術が今後確実に普及していけば、その総売上高は2020年までに1500億米ドルに達し、ARだけで約1200億米ドルを占める見込みだという。
製造業界でAR/VRへの関心が高まっている背景には、コネクティビティの存在がある。Mehkri氏は、「今や誰もが、IoTやM2Mというバズワードを耳にするようになったが、1つの考え方として、これらは『人々の動き方や、やりとりの仕方などを、機械で相互につなげること』だといえる。さまざまな機械がデジタル化されているが、人間はアナログであるため、AR/VRが、人間とデバイスをつなぐレイヤーを追加するのだ。
Mehkri氏は、「リモートアシスタンスなどの使用例の他、世界中の人々とリアルタイムで設計/描画などの共同作業を行うこともできる」と述べる。利用者は情報の送信のほか、今やっていることをリアルタイムで共有することが可能だ。
デジタルソリューションプロバイダーであるPTCの調査結果によると、ほとんどの企業は、社内利用および内部利益のためにARを導入しており、業務効率の向上やコストの削減などを主なメリットとしている。そして、これらのメリットを確保すべく開発中のユースケースでは指示やガイダンスなどの用途でARを活用している。今後、ARがもっと多くのビジネスに統合されていけば、ARとの相互作用や、でARによるデジタルグラフィックスの操作、スマート/コネクテッドデバイスへのインタフェース接続など、新たな機能が拡充されていくとみられる。
Flexは、組織的に蓄積された知見向けのアプリケーションを考えている。従来、製造情報を文書化し保存、共有するには、時間もコストもかかっていた。Mehkri氏は、「このような知見は通常、現場、または人々が互いに伝え合うことで共有されてきた。もしその情報がアーカイブされていれば、製品概要についてまとめるプロセス定義者向けに、膨大な量の作業指示として提供することが可能になる」と述べている。ただし、製品を作る技術を全て捉えられるわけではない。
Mehkri氏は、「設計者の指の置き方やワイヤの曲げ方といったレベルの知見は、必ずしも記録できるとは限らない」としたうえで、「ARを使用すれば、製品を作る最良の方法を明示し、また、その情報を記録し、研究したり保管したりすることができる。ベストプラクティスのライブラリを持つことができるのだ」と述べる。
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