情報通信研究機構(NICT)とNOKIA Bell Labs(ベル研)の研究グループは共同で、標準外径(クラッド外径:0.125mm)結合型3コア光ファイバーを用い、毎秒172Tビットで2040kmの伝送実験に成功した。伝送能力は351Pビット×kmで、従来に比べ約2倍となる。
情報通信研究機構(NICT)ネットワークシステム研究所のラーデマッハ ゲオルグ フレデリック研究員らは2020年3月、NOKIA Bell Labs(ベル研)のRoland Ryf研究員らの研究グループと共同で、標準外径(クラッド外径:0.125mm)結合型3コア光ファイバーを用い、毎秒172Tビットで2040kmの伝送実験に成功したと発表した。伝送能力は351Pビット×kmで、従来に比べ約2倍となる。
今回の実験は、ベル研が行った結合型マルチコア光ファイバーにおける抑圧されたモード分散特性を利用した長距離伝送実証実験の結果に基づいたもので、NICTが大容量で長距離の伝送システムを構築した。
実験に用いた結合型マルチコア光ファイバーは、受信側で干渉を除去(補償)するための信号処理(MIMO処理)を行う必要があるものの、各コアは伝搬損失のばらつきが小さいという。このため、長距離伝送に適している。その上、同様の処理が必要なマルチモード光ファイバー比べて、受信側で行う信号処理の負荷は小さくて済み、伝送システム全体の電力消費を抑えることができる。
開発した伝送システムを用いた実験では、光コム光源より、波長が異なる359波のレーザー光を出力。この出力光に対し偏波多重16QAM変調を行い、遅延差を設けて疑似的に異なる信号系列とした。この信号系列を長さが60kmある結合型3コア光ファイバーの各コアに入射して伝送する。周回スイッチを経由して再度結合型3コア光ファイバーに入射するというループ伝送を繰り返すことで、最終的な伝送距離は2040kmに達した。そして、各コアの信号を受信し、6×6規模のMIMO信号処理を行い信号を分離、伝送誤りを測定した。
研究グループは、開発した伝送システムを用い、システムの伝送能力を最大化するため、送信および受信時に誤り訂正処理などの符号化を適用し、検証を行った。この結果、ばらつきはわずかにあるものの、359波長がほぼ均等で安定したデータレートが得られ、合計で毎秒172Tビットの伝送実験に成功した。
研究グループは今後、5G利用のサービスや海底ケーブルによる国際間通信など、将来に向けた光通信インフラ基盤技術として、早期実用化を目指す。
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