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38コア・3モードファイバーで毎秒10Pビット伝送周波数利用効率も最高記録を達成

情報通信研究機構(NICT)ネットワークシステム研究所と住友電気工業、オプトクエストは、38コア・3モードファイバーを用いて毎秒10.66P(ペタ)ビットの伝送実験に成功した。周波数利用効率は1158.7ビット/秒/Hzを達成している。

» 2020年01月23日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

光ファイバーの配線数を大幅削減可能に

 情報通信研究機構(NICT)ネットワークシステム研究所と住友電気工業、オプトクエストは2020年1月、38コア・3モードファイバーを用いて10.66P(ペタ)ビット/秒の伝送実験に成功したと発表した、周波数利用効率は1158.7ビット/秒/Hzを達成している。開発した技術を用いると、既存の光ファイバー100本分以上の容量を、1本の光ファイバーで伝送できるという。

 今回の研究では、住友電気工業が38コア・3モードファイバーを、オプトクエストがマルチモードビーム用コア多重器をそれぞれ開発。これらを用いてNICTが大容量伝送システムを構築した。これにより、容量と周波数利用効率の両方で、これまでの世界記録(容量は10.16Pビット/秒、周波数利用効率は1099.9ビット/秒/Hz)を超えたという。

これまで研究開発してきた主な成果と今回の成果 出典:NICT

 マルチモード伝送を行う場合、受信機側で行うデジタル信号処理の負荷を軽減するために、モード間の伝送遅延差を小さくする必要があるという。今回は遅延差が0.6〜3ナノ秒と極めて小さいマルチコアファイバーを製作し、伝送システムの実験に用いた。

 この結果、モード間伝搬遅延による信号処理の負荷を抑えることができ、シンプルな伝送システムを構築することができた。しかも、ほとんどのコアでモード依存の損失は、ファイバー結合器を含めて5〜8.5dBを達成するなど、高い均一性を実現した。

 さらに実験では、256QAMと64QAMの2種類の変調方式を用いて、コアごとに異なる伝送特性を比較した。この結果を基に、より多くの伝送容量が得られる変調方式をコアごとに選択。コアごとで279〜298T(テラ)ビット/秒という大容量の伝送を実現した。

 今回の実験では、合計368波長の波長多重されたレーザ光に、64QAMあるいは256QAMの変調を加え、38コア・3モードの各空間チャンネルに入射した。

伝送システムの実験で行った光信号の多重化イメージ 出典:NICT

 具体的には、多波長を一括生成する光コム光源の出力を変調器に導入して、64QAMあるいは256QAMの変調信号を生成し、分岐および遅延線を用いて114(38×3)本のコピーを作成した。3本の分岐を1組にして、基本モード(LP01)と高次モード(LP11aとLP11b)の、3つの横モードを1本に多重化し、多モード光の38本分をコア多重器で38コアファイバーに結合した。

実験システムの概要 出典:NICT

 伝送された光信号は、コア分離器で38本に分けられ各コアの信号光をモード分離器と光受信機で検波し、測定を行った。この結果、有効な伝送ビットレートとして、合計10.66Pビット/秒の伝送容量が得られたという。

38コア全ての伝送結果 (クリックで拡大) 出典:NICT

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