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理研ら、精度18桁の可搬型光格子時計を開発100億年でやっと1秒ずれる精度

理化学研究所(理研)と東京大学は、「100億年で1秒のずれ」に相当する18桁精度を有する可搬型光格子時計を、島津製作所と共同で開発。これを東京スカイツリーに設置し、アインシュタインの一般相対性理論を検証した。

» 2020年04月09日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

東京スカイツリーで一般相対性理論を検証

 理化学研究所(理研)の高本将男専任研究員と東京大学大学院工学系研究科の香取秀俊教授(理研チームリーダー/主任研究員)らによる共同研究グループは2020年4月、「100億年で1秒のずれ」に相当する18桁精度を有する可搬型光格子時計を、島津製作所と共同で開発したと発表した。開発した光格子時計2台を東京スカイツリーの地上階と展望台に設置し、アインシュタインの一般相対性理論を検証した。

 高速大容量通信や衛星測位では、高い精度で同期された時刻が必要となる。現在は国際単位系の1秒を定義するのに、セシウム原子時計が用いられている。5000万年で1秒のずれに相当する精度を実現しているからだ。香取氏が考案した光格子時計は、これを100倍以上も上回る高い精度を実現している。

 高精度の原子時計を用いると、「重力が強いほど時間はゆっくり流れる」という一般相対性理論から導かれる「重力赤方偏移」を利用して、標高差がわずか数cmでもその違いを計測することができるという。ところが、実験室以外で利用するには、原子時計の可搬性や安定した動作が課題となっていた。また、一般相対性理論はこれまで、人工衛星に原子時計を搭載して検証するなど、高低差1万kmの測定環境を必要としていた。

光格子時計の模式図 出典:理研、東京大学

 そこで研究グループは、18桁精度を維持しつつ装置の小型化や可搬化に取り組んだ。具体的には、実験室で用いていた大型光学定盤上のレーザー装置を含む光学系を集約し、制御系を含めボックス化した。開発した可搬型ストロンチウム光格子時計は、実験室環境で実現した時計の精度を、実験室以外でも維持している。さらに、合計17台のレーザー装置について周波数制御の自動化を図り、かつインターネット経由で遠隔操作ができるシステムを構築することで、長時間の安定動作を可能にしたという。

 研究グループは、検証実験を行うため、開発した可搬型ストロンチウム光格子時計を東京スカイツリーの地上階と展望台の2カ所に設置した。時計は、レーザー分配器とレーザーボックス2台、時計分光用真空槽からなる。それぞれの時計は、レーザー分配器で分岐された光ファイバーで接続されており、時計分光や狭線幅冷却、光格子用のレーザー周波数を共有する仕組みだ。

開発した可搬型光格子時計の外観 (クリックで拡大) 出典:理研、東京大学

 地上階と展望台の高低差は約450mである。光格子時計の周波数をそれぞれ測定し、その差分から「重力赤方偏移」を求めた。一方で、GNSS測量や水準測量、レーザー測距などによる標高差測定と相対重力計による重力測定を組み合わせて、光格子時計が置かれた場所の「重力ポテンシャル差」を求めた。

 こうして得られた「重力赤方偏移」と「重力ポテンシャル差」を比較することで、一般相対性理論の検証実験を行った。その結果、原子の共鳴スペクトルは、標高差450mに相当する約21Hzのずれが生じていることを確認した。

東京スカイツリーで行った一般相対性理論検証実験の概要 出典:理研、東京大学
検証実験の測定結果。上図は時計比較、GNSS測量、レーザー測距によって得られた重力ポテンシャル差、中図は地上階と展望台に設置した2台の光格子時計の重力赤方偏移、下図は同じ高さに設置した2台の時計の周波数差 出典:理研、東京大学

 研究グループによれば、精度が高い可搬型光格子時計を用いると、数センチレベルのプレート運動や火山活動による地殻の上下変動の監視、あるいは数時間から数年という単位で生じる地殻変動(標高変化)を詳細に観測することができるという。

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