Wi-Fi 6には、他のワイヤレス規格に比べると高い消費電力に対応するため、いくつか新しい機能が追加されている。データスループットやロバスト性の向上とともに、消費電力の削減を実現している。
例えば、「TWT(Target Wake Time)」という機能は、APと端末間で通信のタイミングを調整し、端末が信号を受信する必要がない場合はスリープ状態に移行させるというもの。これにより端末の消費電流が大幅に減少し、バッテリー寿命を延ばすことができる。
また、OFDMA(直交周波数分割多元接続)は、高密度環境でのパフォーマンスを向上させる。チャネル内の帯域幅を分割することで、複数のデバイスが同じ時間枠でデータを受信できる。このように帯域幅をうまく活用することで、データ伝送効率が上がり、消費電力を削減しつつデータスループットを大幅に向上できる。
この他、BSS(Basic Service Set) ColoringとDCM(Dual Carrier Modulation)がある。BSS Coloringは、各APで異なるColorを設定(色分け)することで干渉に影響されにくくする機能で、DCMは、同じ情報を、離れた一対のサブキャリアで変調することでデータ通信の冗長性を確保するという機能だ。
一方のNXPは2020年4月、「IEEE 802.11axの機能をより広い市場にもたらす」とするWi-Fi 6のポートフォリオを発表した。同社のワイヤレスコネクティビティプラットフォーム「88W9064」などをベースにしたもの。NXPのワイヤレスコネクティビティ担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーであるMark Montierth氏は、「現在、Wi-Fi 6を実装するにはコストが高過ぎる」と述べる。「NXPの新しい製品は、IoTや自動車、産業機器といった分野でWi-Fi 6の導入を加速させるだろう」(同氏)
ABI ResearchのZignani氏は、「これまでWi-Fi 6の採用は主にスマートフォンがけん引してきたが、2020年以降はIoT、インフラ、自動車市場がその役を担うだろう」と予測する。同氏は「NXPが発表した製品のような、消費電力とコストを最適化したチップセットの登場によって、こうした動きはさらに促進されるはずだ」と続けた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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