Wi-Fi Allianceは2019年9月19日、新たなWi-Fi認証プログラム「Wi-Fi CERTIFIED 6」の提供開始(米国時間9月16日)を受けて、東京都内で説明会を開催し、普及見通しなどを明らかにした。
Wi-Fi Allianceは2019年9月19日、新たなWi-Fi認証プログラム「Wi-Fi CERTIFIED 6」の提供開始(米国時間9月16日)を受けて、東京都内で説明会を開催した。Wi-Fi CERTIFIED 6は、新しい無線LAN規格である「IEEE 802.11ax」ベースのWi-Fi「Wi-Fi 6」に対応する機器の相互接続性や安全性などを担保するための認証プログラムである。Wi-Fi CERTIFIED 6の認証取得には、Wi-Fi Allianceが定義するセキュリティ規格「WPA3」などへの対応が求められる。
Wi-Fi 6の正式な認証プログラムの提供は9月16日から始まったばかりだが、一部のメンバー企業は先行してWi-Fi CERTIFIED 6認証を取得してWi-Fi 6対応製品の出荷が始まっている。Samsung Electronicsの「Galaxy S10」や2019年9月20日発売のApple製スマートフォン「iPhone 11」などだ。
Wi-Fi Alliance テクノロジー兼エンジニアリング担当バイスプレジデントMark Hung氏は「2020年末までに16億台の対応製品の出荷が予想されている。最初は特にスマートフォンとアクセスポイント(AP)ルーターの出荷から始まる。その後、幅広い機器で、Wi-Fi 6対応が進むだろう」と見通しを語る。
Wi-Fi 6についてHung氏は「Wi-Fiにとって大きな転換点」と表現する。Wi-Fi 6は最大通信速度9.6Gビット/秒(bps)を実現するなど、従来のWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)と比べ容量と速度が4倍に向上。遅延時間も1ミリ秒未満になっている。
こうしたWi-Fi 6の進化は、主に8つの技術を新規導入、ないし、強化し、実現した。8つの技術とは「マルチユーザーMIMO」(MU-MIMO)、「OFDMA」(直交周波数分割多元接続)、「ビームフォーミング」「160MHz幅チャンネル」「ターゲットウェイクタイム」(TWT)、「BSSカラーリング」「8空間ストリーム」「1024-QAM」(1024直角位相振幅変調)。
Wi-Fi 6が採用したこれら8つの技術の中で、「最もWi-Fi 6を特長付ける重要な技術」(Hung氏)と位置付けるのが、OFDMAだ。OFDMAは、携帯電話通信(セルラー)でも利用される技術だが、Wi-Fi 6で初めて採用された。「OFDMAにより、Wi-Fiは、より確実に性能を発揮できるようになった。これまでのWi-Fiはベストエフォート型での性能を発揮したが、Wi-Fi 6では、OFDMAによって各機器にリソースを分配し、性能を発揮できるようになった。そのため、多様な用途で応用が可能になる。例えば、5Gで実現される“ネットワークスライシング”と同じようなことが行えるようになった。同じネットワークで低消費電力のIoT通信と、高解像度の4Kビデオ配信にも使える」と述べた。
低消費電力性が求められるIoT端末を視野にWi-Fi 6は、消費電力を抑制するための技術としてTWTを導入。TWTは、デバイスとAP間で、デバイスが起動するタイミングを設定できる技術で、必要な時にだけデバイスのWi-Fi機能を起動させることで、消費電力を抑制する。「これまで、Wi-Fiはあまり低消費電力の無線通信技術とは考えてられてこなかった。だが、TWTにより、その概念は変わる。電池寿命を数日から数年に延ばすことが可能になった」とする。
Wi-Fi 6でさまざまな性能向上を果たしたWi-Fiだが、一部で、商用サービスが始まりつつある5G(第5世代移動通信)との競合を危惧する声もある。こうした5Gとのすみ分けについてHung氏は、「Wi-Fi 6と5Gは相互補完の関係にある」として、競合関係にはないと強調した。「既にモバイルデータ通信の80%は、Wi-Fiにオフロードされている。Wi-Fi 6と5Gは、多くの技術的な観点で共通しており、5Gの通信をオフロードすることが十分可能な性能を備えている。そのため、5Gが普及すれば、さらにWi-Fiにオフロードされるという傾向は強まると考えている」と述べた。
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