自動車の発達の歴史は、運転操作とは直接には関係しない機器の増加の歴史でもあった。退屈な運転をいくらかでも快適にする機器(ラジオやオーディオ、エアコン)や、自車両の位置を把握するとともに目的地までの運転経路を探索する機器(カーナビ)などが積まれるようになった。
運転操作(運転操作タスク)とは直接には関係しない車載機器を運転中に操作する(車載機器操作タスク)ことは、当然ながら運転への集中を妨げる。運転操作タスクと車載機器操作タスクの切り替えが多くなれば、運転操作タスクの正確さは損なわれる。そもそも車載機器操作タスクをどのようなタイミングで実行すべきか、どのくらいの時間で完了させるべきかについては運転者各自の判断に任されており、安全性が担保されていない。
例えば時速30kmと比較的低速で走行する自動車でも、3秒間で25mの距離を走行する。仮にカーナビやスマートフォンなどの操作に夢中になってしまうと、3秒間で1トン前後の重量物が25mの距離を無制御に近い状態で突っ走ることになる。たった3秒でも眼を閉じて走行することなど普通の心理状態ではできない。ところが車載機器を操作していると、実際に同様の事態が起こり得る。仮に歩行者や自転車などが数多く存在する夕方の市街地でそのような事態が発生すると、交通事故が発生する可能性は少なくない。
そこで最近では、車載機器の操作を集約化したり、自動化したりすることで操作タスクの負担を軽くすることが試みられている。詳しくは次回に述べたい。
(次回に続く)
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