今回は、業界で期待が高まっている「エッジコンピューティング」を解説する。AWS(Amazon Web Service)やMicrosoft、半導体ベンダー各社も、このトレンドに注目し、取り組みを加速している。
クラウドシステムやIoT(モノのインターネット)が普及していく中で、最近ではネットワークの効率的な運用や低レイテンシの実現のために、端末で処理する、いわゆるエッジコンピューティングに注目が集まっている。こういった状況の中で、従来疎結合であったネットワーク上位層とエッジ側を密に結合させる技術が徐々に展開され始めた。ここでは、技術動向や将来展望について説明したい。
IoTはあくまでも手段であり、IoTを利用して実現できるコトが企業にとって効果のあるものか否かが重要である。この定義が不明確な状態でPoC(Proof of Concept)を開始するものの、PoCで終わるケースが多く問題視されており、現在は、効果を含めた全体設計をきちんと行い、かつスモールスタートでの実行が推奨されている。
その一方で、全体設計ができたとしても、実際のセンサー設置や情報収集、クラウド接続や運用など、システム構築には課題が多いことも事実だ。システムの構成としては、センサーの設置と制御(マイコン制御)、センサーで得た信号を収集してネットワークに送り込むゲートウェイ、ネットワーク経由で得たデータを処理するクラウドが必要となる。また、データ処理の結果、エッジ端のアクチュエーターによって実行されることがあり、クラウドからの逆ルートで指示系統の構築も必要である。
従来、これらのシステムは水平分業され、センサー端末/アクチュエーター、ゲートウェイ、(ネットワーク)、クラウドはそれぞれ別のベンダーが提供し、システムインテグレーターがシステム構築を行ってきた。だが、上記のようなスモールスタートではこういったシステムをより素早く簡潔に垂直連携していく必要がある。
最近では、IoTシステムでAI(人工知能)を活用したいというケースも増えているが、この場合には、学習データの収集、学習結果による推論モデルの構築と展開もシステムに追加する必要があり、よりシステムが複雑化する。
IHSでは何らかの形でインターネットに接続されるデバイスの数量(累積)を下記のように予測している。
この数量はゲートウェイのような直接ネットワークに接続されるものと、それを介して接続される(テザリング接続)ものを含んでいるが、2018年時点で300億台に達し、2022年には500億台を超えるものと予測している。大部分はスマートフォンを含む通信機器だが、今後大きく成長するのは産業分野である。
もとよりIoTは産業分野での活用が注目されているが、この活用のためにはいくつか技術的なハードルもある。AIを含めた垂直連携システムの構築、応答速度(レイテンシ)、ネットワーク帯域幅の節約、セキュリティ堅牢性だ。
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