Juliussen氏は、「VeoneerとQualcommの協業は全体的に見て、双方にメリットがあると言える。しかしADASに関しては、QualcommにとってVeoneerとの協業が賢明な策であると言える理由の中のごく一部にすぎない。もっと重要なのは、Veoneerが、安全システムの分野で強みを持つティア1であるという点だ。Qualcommにとっては、自動車メーカーへの優れたアクセスを得ることができ、将来的に自動運転車市場への拡大も容易になるだろう」と述べている。
技術顧問サービスを手掛けるVision Systems Intelligence(VSI Labs)の創業者であり、主席アドバイザーを務めるPhil Magney氏は、「Qualcommは、まだ自動車市場にうまく参入できていないが、テレマティクス分野には常に関与しているため、V2X(Vehicle to everything)における優位性を確立できる態勢を整えている。しかし同社は、それ以外のADAS/自動運転車市場では、プレーヤーとはいえない状況にある」との見解を述べる。
Magney氏は、「Qualcommが目標を達成するためには、Veoneerとの協業が必要だ。結局のところ、現在市場に参入している半導体チップメーカーの中で、決定的なプラットフォームを構築することが可能なリソースを持っている企業は1社もいない。Veoneerは、ADAS分野において信頼されている企業だ」と続けた。
VeoneerとQualcommは今回のカンファレンスコールで、「2023年前半には、ティア1や自動車メーカーに向けて、Mobileyeに代わる“真の代替製品”を提供できる見込みだ」と繰り返し主張していた。
しかし、Veoneer/Qualcommがティア1や自動車メーカーに対して、Mobileyeの代わりに自社製品を採用するよう説得するためには、何が必要なのだろうか。イスラエルに拠点を置くMobileyeは、他のどの半導体メーカーよりもはるかに深く既存のADAS市場に関与しているという状況にある。
Magney氏は、「正直なところ、Mobileyeの代替品は数多く存在しており、いずれもオープン性をアピールしている。このため、自社のソリューションがMobileyeと同じように優れた性能を実現できるということを実証する必要がある」と述べている。
「Qualcommは、自動運転における(物体や歩行者などの)検知/認識の段階以降では、アルゴリズムを構築可能な専門技術を確保できていないことを認識している。このため、Veoneerとの協業が必要だと考えたのだ」(Magney氏)
同氏は「Veoneer/Qualcommは、プラットフォームの拡張性とツールチェーンもサポートする必要がある」と指摘している。
現時点で、Mobileyeの技術を採用していない大手自動車メーカーは、トヨタ自動車とMercedes Benzのみだ。VeoneerとQualcommはどこを狙うのだろうか。
Magney氏は、「多くの自動車メーカーがMobileyesの「EyeQ」チップをADASに使用しているが、現時点では、どことどこが真に強固なパートナーシップを組んでいる状況だとは思わない。プライムパートナーに対する代替メーカーや技術も確保する方向で動いているメーカーをあちこちで見てきた」と説明する。
また、「次世代ソリューション向けのプログラムは数多くある。Qualcommは、今では自動車分野における優れたサポートを提供しており、エコシステムのパートナーを見ても、QNX、Elektrobit、Trimble、Infineon Technologies、TomTom、Green Hills Softwareなどかなり充実している」と続けた。
Qualcommは特に言及しなかったが、ADASにおける同社の最初の大きなデザインウィンは、GM(General Motors)からもたらされる可能性は十分にある。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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