スウェーデンのティア1メーカーであるVeoneerとQaulcommが2020年8月27日(米国時間)に、協業提携を発表した。これにより、自動運転車スタック/SoC(System on Chip)プラットフォーム分野において、半導体メーカーやティア1、自動車メーカーの間で権力争いがまだ続いているということがよく分かったのではないだろうか。
スウェーデンのティア1メーカーであるVeoneerとQaulcommが2020年8月27日(米国時間)に、協業提携を発表した。これにより、自動運転車スタック/SoC(System on Chip)プラットフォーム分野において、半導体メーカーやティア1、自動車メーカーの間で権力争いがまだ続いているということがよく分かったのではないだろうか。自動車業界のアナリストであるEgil Juliussen氏は、「新型コロナウイルス感染症の拡大により、自動車市場においてプレーヤー企業間の提携が再構築されるようになったといえる」と指摘している。
QualcommのプレジデントであるCristian Amon氏と、スウェーデン ストックホルムに拠点を置くVeoneerのCEO(最高経営責任者)を務めるJan Carlson氏は、2020年8月27日に行われたカンファレンスコールの中で、協業提携に合意したことを明らかにした。Veoneerが開発した運転向けの知覚/認知用スタックソリューションと、QualcommがADAS(先進運転支援システム)/自動運転車向けに開発したプラットフォーム「Qualcomm Snapdragon Ride Platform」とを組み合わせていく考えだという。
両社ともカンファレンスコールの中で、競合相手となる企業名については沈黙を守っていたが、自動運転車業界の構造を変化させていくであろう注目すべき点が2つあった。
1つ目は、Veoneer/Qualcommチームが、その照準をIntel/Mobileyeに合わせているという点だ。
Veoneer/Qualcommは、「われわれのソリューションは、ティア1や自動車メーカー向けにオープンシステムを提供することにより、既存サプライヤー(Mobileyeを示唆)のソリューションを完全に置き代える存在となるだろう」と主張している。またカンファレンスコールの中では何度となく、「Mobileyeのソリューションはティア1にとって、差異化を図るための自由がほとんど利かないブラックボックスだ」とするコメントを繰り返した。
そして2つ目は、Veoneerが、NVIDIAに見切りをつけてQualcommを選んだという点だ。
VeoneerのCEOであるCarlson氏は、「今回のパートナーシップは、独占的な提携契約なのか」とする質問に対し、「SoCのパートナーシップに関して、他の企業との提携は考えられない。われわれが選んだのはQualcommだ」と答えている。
VeoneerがかつてNVIDIAと協業関係にあったのは、周知の事実である。Veoneerは2018年に、Volvo Carsとの間で折半出資した合弁会社Zenuityと共同で、新型ボード「Zeus」を開発したと発表した。Veoneerがハードウェアと基本ソフトウェアを、Zenuityが自動運転ソフトウェアスタックの開発と実装を、それぞれ手掛けたという。Zeusは、拡張可能なアーキテクチャ「NVIDIA DRIVE AGX Xavier」をベースとして、オペレーティングシステム「NVIDIA DRIVE OS」を搭載する。
Juliussen氏は米国EE Timesのインタビューの中で、このZenuityとの開発経験を踏まえ、「Veoneerは小規模なティア1サプライヤーだが、自動運転スタック開発に関しては決して新参者ではない」と説明している。
VeoneerとVolvoは2020年に、Zenuityを分割することを決断し、同年7月にその手続き完了させたところだ。Veoneerはプレスリリースで、「われわれは、会社分割の処理の一環として、IP(Intellectual Property)ライセンスを受け取った。また、Zenuityから約200人のソフトウェアエンジニアたちを受け入れることで、当社のソフトウェアおよびシステム開発チームを強化していきたい考えだ」と述べている。報道によると、Veoneerはこの会社分割により、約3000万〜4000万米ドルのコスト削減を実現できる見込みだという。Juliussen氏は、「新型コロナウイルスの感染拡大による経済的な影響を受けたために、Zenuityを分割するに至ったのではないか」と推測している。
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