Ielmini氏は、「研究の目的は、ReRAMベースの新しいハードウェアを開発して、継続的な学習を実現することにある。研究チームが開発したSiOx ReRAMベースのハードウェアは、既に学習した内容をベースとして、50%多く学習することが可能だ。これは、人間が何かを学習する時に、脳の中で実際に起こっていることだ」と続ける。
「基本的に、脳はニューロンの発火によって情報を伝達するが、発火するたびにエネルギーを消費する。脳は、高いエネルギー効率を維持したいため、ニューロンがスパイクを生成する場合のしきい値を下げるべく、内部フィードバックを発生させる。このため最終的に、生涯にわたって学習し続けることが可能になるのだ。研究グループはこれを、ReRAMを使用したハードウェア上で模倣することで、高いエネルギー効率も実現できると考えている。AIハードウェアは現在、このような重大な限界に直面しているところだ」(Ielmini氏)
WeebitのCEOであるCoby Hanoch氏は、「当社としては、これまで3年以上にわたってIelmini氏の研究チームと密接に協業してきたため、ミラノ工科大学の研究結果を見てもそれほど驚かなかった。重要なのは、当社のSiOx ReRAMが、高性能メモリとして機能できるだけでなく、他の高性能アプリケーションも実現可能であるということを実証することだ。われわれは常に、ReRAMには、ニューロモーフィック用途やさまざまな高性能アプリケーション向けとして、大きな可能性が秘められていると確信していた」と述べる。
Weebitは、大勢の研究者たちとともに、ReRAMの潜在的な用途に関する取り組みに携わっている。Hanoch氏は、「ミラノ工科大学との共同研究により、既存のAIシステムの柔軟性を高めることが可能になる。現在AIでは、一般的なシステムトレーニング方法として、“教師あり学習(Supervised Learning)”が適用されているが、膨大な労力を要する上、トレーニングが完了しても、そのトレーニング対象となっているタスクしか実行することができない。しかし人間の脳は、柔軟性に優れ、ほんのわずかなイメージからでも予測することができるため、膨大な量のトレーニングを受けなくてもオブジェクトを分類することが可能だ」と述べる。
Hanoch氏は、「当社は今後も、ニューロモーフィック用途の可能性について強気な見方をしていくつもりだが、pre-revenue(収益を生み出す前の段階)の新興企業なので、まずは、組み込み製品の市場投入や、ディスクリートReRAM製品の開発によって最初の収益を上げられるよう注力していく。ニューロモーフィックシステムは今後、半導体業界に大変革をもたらすとみられるため、将来に備えていきたい」と語った。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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