次のステップとして、モンテカルロ法によるばらつきの調査を用いたDOEを実施し、重要なプロセスステップを特定します(図5)。モンテカルロ法を用いたDRAMのワード線(WL)のばらつきは、パラメーターのばらつきの調査に使用されています。
WLプロセスパラメーター値は、平均値または公称値および標準偏差についてガウス分布に基づき無作為に設定されています。このデモンストレーションでは、50回の実験が選択されています。しかしながら、有意義な調査結果を得るには、一般的に100回以上の実験が必要です。
図6はDOEの結果を示しています。DOEでは、閾値電圧(Vt)が0.4837Vから0.5031Vの間でばらついています。SEMulator3Dによる回帰分析は、閾値電圧に及ぼす影響の観点から重要な5つのパラメーターを特定するのに有効です。これらのパラメーターのp値は0.5未満を示しており、帰無仮説を棄却しています。1つ目のパラメーターであるインターセプトは常にリストに記載されるため、今回の説明には含めていません。
さらに詳しい調査で特定された最も重要な5つの要素は以下の通りです。
直線回帰プロットにおける決定係数(r2)の0.97882という高い値は、モデルがデータに最適であることを意味しています。ゲート誘電体膜厚とVthプロットが強い相関関係を示している一方で、マンドレルのスペーサ厚さとVthプロットはそうした相関関係を示していないため、重要な入力要素の候補から外すことができます。
DOEの結果は、Vthが下限値(LSL)から上限値(USL)までの範囲外であるなど、めったに発生しないケースの特定にも役立つため、エンジニアは詳しく調べた上でプロセス条件を見いだせます。
最適化について違った見方をするために、調査の目標として、代わりに電気的特性を使用できます。これにより、電気的な目標を用いることをプロセスステップ最適化の目標にすることができます。プロセスステップの各パラメーターは、電気的性能を満たす条件を探しながら変動させることができます。
使用している装置によって異なるそれぞれのエッチング挙動に対する許容範囲は、ソフトウェアで定義されています。このように、材料エッチング選択性、水平方向の比率、ポリマー/テーパー、スパッタリング、イオンフラックス分布といったパラメーターについてそれぞれの挙動を定義できます。DOEによって特定される重要な入力要素を用いて、電気的性能に対する目標を入力します。
SEMulator3Dは、それらの電気的目標が達成されるように、直接最適化を用いて、WLエッチングに最も適したエッチングステップの挙動プロセスパラメーターを決定します。キャリブレーションされたプロセス案には、酸化膜/シリコン膜/窒化膜の比率、酸化膜および、シリコン膜のテーパー、選択性、側壁角といったパラメーターなどが含まれます。
それらの結果から、プロセス調査において電気的性能が存在していることや、電気性能をその範囲で達成できないことを検証できます。
工程の仮定は、開発初期段階だけでなくハードウェア導入前でも行えるため、実際にウェハーを製作する時間とコストをかけることなく、仮想プロセスでそれらの仮定の妥当性を確認できます。
このDRAMのケーススタディは、仮想環境で数多くのDOEや工程のばらつきの調査を実施することによって、無関係のDOEにかける時間とコストを削減するとともに、性能および、歩留まりの目標を速やかに達成し、市場投入までの時間短縮が可能になることを証明しています。
Lam ResearchのグループであるCoventor社の仮想製作プラットフォームの顧客サポートをするエンジニアのマネジメントに従事。次世代ノードの半導体統合の課題に関して、モデリングなどのユニークな方法を用いた解決方法を展開。アリゾナ州立大学 デバイス物理学 博士号取得。
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