銅配線では、それまで普及していたサブトラクティブ技術が適用できなかった。エッチングによって銅金属膜の一部をきれいに除去すること(配線パターンを形成すること)が困難であることが、最大の理由である。
銅配線は成膜技術でも課題を抱えていた。アルミ金属膜の成膜技術として一般的だったスパッタリング(PVD)と多結晶Si膜の成膜技術として一般的だった化学的気相成長(CVD)のいずれもが、銅金属膜を高い品質で実用的な厚さに成長させることが困難だった。
そこで銅配線用のダマシン技術では、絶縁膜に配線パターンの溝を形成し、電解メッキによって銅金属膜を成膜して溝に埋め込む。最後の平坦化には、CMP(化学的機械的研磨)技術を使う。CMP技術は1990年代前半に実用化が始まった平坦化技術である。それまで平坦化プロセスで主流だったエッチバック技術に比べ、CMP技術は大幅に高い平坦度を実現した。
ダマシン技術による銅配線のプロセスをもう少し詳しく述べよう。絶縁層(誘電体膜)の上にマスク(ハードマスク(HM))層を形成し、ハードマスク層をエッチングして配線のパターン(原型)を形成する。次にハードマスクを使って絶縁層をエッチングし、マスクと同様の配線パターンを作る。それからハードマスクを除去し、電気メッキによって銅金属膜を絶縁層に埋め込む。さらにCMPによって表面を削って平らにし、絶縁層の表面を露出させる。最後にエッチングストップ(ES)層を成膜する。
対するサブトラクティブ技術では、金属配線層の上にハードマスク層を形成し、ハードマスク層をエッチングして配線のパターン(原型)を形成する。次にハードマスクを使って金属配線層をエッチングし、ハードマスクと同様の配線パターンを作る。続いてハードマスクを除去し、化学的気相成長(CVD)によって絶縁膜(誘電体膜)を埋め込む。そしてCMPによって表面を削って平らにし、金属配線層の表面を露出させる。それからエッチングストップ(ES)層を堆積する。
ダマシン技術とサブトラクティブ技術のいずれも、ハードマスクのピッチが最小加工寸法を決める。ダマシン技術ではハードマスクの間隔が金属配線の幅に、サブトラクティブ技術ではハードマスクの幅が金属配線の幅となる。両者の大きな違いは、絶縁膜に溝を形成するか、金属膜に溝を形成するかにある。この違いは、実用的な配線構造ではかなりの差異をもたらす。具体的な差異については、次回でご説明したい。
(次回に続く)
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