米Micro Magicが、世界最速をうたう64ビットRISC-Vコアを発表した。「Apple M1」チップや「Arm Cortex-A9」コアベースのチップにも追い付ける性能を実現できるとする。
米Micro Magicが、世界最速をうたう64ビットRISC-Vコアを発表した。「Apple M1」チップや「Arm Cortex-A9」コアベースのチップにも追い付ける性能を実現できるとする。同社は、「RISCのベテラン共同開発者であるDavid Patterson氏が当初掲げていたRISCアーキテクチャ構想をうまく実行することにより、既存の電池式デバイスの電力バジェットの範囲内で快適に動作させることが可能になった」と考えているようだ。
Micro Magicは2020年10月末に、「当社が開発した64ビットRISC-Vコアは、5GHzのクロック周波数と、1.1Vで1万3000のCoreMark値を達成した。公称電圧0.8Vで動作する単一のコア(シングルコア)は、4.25GHzで1万1000CoreMarkを達成し、消費電力はわずか200mWである」という、たった二つの文だけの簡潔なリリースを出した。同社の顧問を務め、回路シミュレーター「FineSim」の開発に携わった経歴を持つAndy Huang氏は、要点について説明するために米国EE Timesにデモを披露し、Odroidボード上でコアを動作させ、0.8Vで4.327GHz、1.1Vで5.19GHzを達成してみせた。
Micro Magicは、米国カリフォルニア州に拠点を置く株式非公開のEDAベンダーだ。3次元シリコン貫通ビア(TSV:Through Silicon Via)のレイアウトツールを専業として手掛けており、1兆個を超えるトランジスタのロードや表示、編集設計などを、リアルタイムで実行することが可能だという。
同社は1995年に創設され、その後Juniper Networksに2億6000万米ドルで買収されたのだが、2004年に最初の創設者たちによって再生されることになった。共同創設者であるMark Santoro氏とLee Tavrow氏は、かつてSun Microsystemsに勤務していた同僚で、300MHzのSPARCマイクロプロセッサ開発チームの指揮を執っていたという。Huang氏は、「Santoro氏は、AppleでSteve Jobs氏の下で働いた経歴も持つ」と述べている。
また同氏は、Micro Magicの消費電力量が200mWを実現していることの重要性についても説明している。「既存の電池式デバイスでは、1W当たりのCoreMarkの方が、1MHz当たりのCoreMarkよりもはるかに重要である。一般的な5Wデバイスの場合、Micro MagicのRISC-Vコアならば25コアを実装することが可能だ」(Huang氏)
Huang氏によれば、Micro Magicは今回開発したRISC-Vコアを、IP(Intellectual Property)ライセンスという形で提供することを考えているという。「われわれのRISC-VアーキテクチャはスマートフォンからPC、自動車、データセンターまで活用できるスケーラビリティを備えている」(Huang氏)
なおMicro Magicは2020年12月2日(米国時間)、さらに新しいリリースを出し、「われわれは64ビットRISC-Vコアで、3GHzにおいて8000CoreMark値と、70mW以下の消費電力を達成した」と発表した。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.