米国EE Timesは2021年1月にソニーのVISION-Sを取り上げており、筆者もその詳細に目を通した。CES 2020での発表時に「派手な宣伝活動(マーケティングスタント)」だと片付けたのは時期尚早だった。
下の画像はVISION-Sのインテリアを写したものだ。今後VISION-Sが消費者向けに生産、販売されることを示すものは何か? それは、ダッシュボード上部のセンタースクリーンの上にあるドライバーモニタリングシステムの存在だ。
VISION-Sは、Magnaが実績のある高度なデジタルコックピットを設計/開発する能力を持っていることを裏付けている。上の画像には、柱のように並んだスクリーンが映っているからだ。筆者の見解では、AppleのiCarがどのようなものでも、スクリーンとディスプレイは重要な機能になるだろう。視線で制御するHMI(Human Machine Interface)やコックピットエクスペリエンスを実現すれば、人々に驚きを与えるに違いない。
2019年にドイツで開催された「フランクフルトモーターショー」で展示されたBytonの「M-Byte」とホンダの「Honda e」にも、同様のディスプレイが搭載されていた。オンライン開催となった「CES 2021」では、Mercedes-Benzが次世代インフォテインメントシステム「MBUX Hyperscreen」を発表した。幅約140cmにもなる湾曲スクリーンで、キャビン全体に広げることができる。
AppleのiCarについては製造パートナーのうわさが飛び交っている。韓国のHyndai(現代自動車)がiCarを製造すると2021年1月初旬に報道されたが、その数週間後には消えた。
AppleがiCarの開発でMagnaと協力している可能性を示唆しているのは、MagnaがiCarの開発でAppleと協力しているのかについて沈黙を貫いていることである。報道によると、Magnaのグラーツ工場の自動車生産能力は年間20万台と推定されている。これは、初期の生産としては十分な規模である。また、Magnaは北米で自動車を製造することを検討しているともいわれている。
Magnaと並んでフィンランドValmet Automotiveも自動車製造サービスを提供しており、最近ではiPhoneを製造しているFoxconnがEV生産への進出を発表した。Bloombergの報道によると、Foxconnは2021年後半に、中国の自動車メーカーZhejiang Geely Holding Group(以下、Geely)との間に設立された受託製造部門を通じて自動車を発売する予定だという。興味深いことに、FoxconnとGeelyの提携で最初に発表された顧客はFiskerだった。
AppleはiCarの下請け製造に多くの選択肢を持っており、Fiskerとソニーがこのルートで市場に自動車を投入することができれば、Appleにも可能性がある。Magnaはティア1サプライヤーおよび車両サプライヤーとしての実績があり、FoxconnはiPhoneの下請けメーカーとして長年の実績がある。筆者の推測では、AppleはFiskerにならって、MagnaやFoxconnと自動車を製造できると考えているのかもしれない。
半導体メーカーにとってもはやファブレスは自然なモデルであるように、近い将来、自動車業界でも同様のシフトが起こり得る可能性は十分にあるのだ。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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