電気通信大学と英国ヨーク大学および、岐阜大学の研究グループは、磁気スキルミオンの渦巻き方向(カイラリティ)を、電気的方法で識別することに成功した。今回の成果は、磁気スキルミオンを利用した大容量メモリの開発につながるとみられている。
電気通信大学大学院情報理工学研究科の仲谷栄伸教授と英国ヨーク大学電子工学科の廣畑貴文教授および、岐阜大学工学部の山田啓介助教らによる研究グループは20221年4月、磁気スキルミオンの渦巻き方向(カイラリティ)を、電気的方法で識別することに成功したと発表した。今回の成果は、磁気スキルミオンを利用した大容量メモリの開発につながるとみられている。
磁気スキルミオンは、磁性薄膜材料に現れる磁気渦構造で、「左巻き」と「右巻き」が存在するなど、巻き方向に自由度がある。そのサイズは数nmと極めて小さく、磁性薄膜内での安定性に優れている。動作時の電力消費も少ない。このため、次世代磁気メモリへの応用が期待されている。
研究グループはこれまで、磁気スキルミオンに熱パルスを照射することで、磁気スキルミオンのカイラリティを切り替えることができる方法を開発してきた。しかし、カイラリティを識別するまでは至らなかったという。
今回は、マイクロマグネティックシミュレーションを用いて、スピントランスファートルク(STT)による磁気スキルミオンの移動を模擬し、磁気スキルミオンのカイラリティを識別する方法について検討した。
カイラリティを識別するためのトラックには分岐を設け、分岐領域にスピン軌道トルク(SOT)が働く素子構造とした。トラックに電流を印加すると、磁気スキルミオンがトラック上を移動。これが分岐領域に達すると、SOTと磁気スキルミオンのカイラリティによって、磁気スキルミオンの移動方向は変わることが分かった。
これらの研究成果によって、SOTとSTTを組み合わせれば、磁気スキルミオンのカイラリティを電気的手法で識別できることを示した。
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