EVのインバーター向けSiC-MOSFETパワーモジュール : 航続距離を5%以上伸ばせる (2/2 ページ)
InfineonのCoolSiC MOSFETは、独自のトレンチ構造で製造されている。MOSFETで一般的な構造はプレーナー型だが、これは製造プロセスは比較的容易だが、ゲート酸化膜の下に欠陥密度が高い領域ができ、チャネル抵抗が高くなってしまう。加えて、一定以上の微細化が難しい。そのため、業界全体のトレンドとして、欠陥密度を低減できる「トレンチ構造に向かっている」(林氏)という。「ゲート酸化膜の信頼性と、デバイスの性能にはトレードオフがあるが、Infineonとしては多少性能を犠牲にしても高い信頼性を確保することで差別化している」と林氏は述べる。
プレーナー型とトレンチ型、Infineon独自のトレンチ型の比較 出典:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン(クリックで拡大)
インフィニオンのシニアバイスプレジデントでオートモーティブ事業本部 本部長を務める神戸肇氏は、Infineonのオートモーティブ事業についても言及した。同社の2020年度におけるオートモーティブ事業の売上高は35億4200万ユーロで、売上高全体の43%を占める。Strategy Analyticsの調査によると、車載半導体市場での2020年のシェアは13.2%でトップ。パワー半導体でも1位となっている。さらに、Cypress Semiconductorを買収したことで「従来の制御系に加え、クラスターパネルやナビゲーションといった車載インフォテインメント系の製品も加わった」(神戸氏)と強調する。
さらに神戸氏は供給体制についても触れた。半導体不足という現状を考慮すると「供給も重要な側面」とし、「パワー製品は全て自社で製造していることがわれわれの強み」と強調。Infineonは、ドイツ・ドレスデン工場の他、オーストリア・フィラッハにも最新の300mmウエハー対応のパワー半導体工場を立ち上げ中で、2021年7〜9月期に量産を開始する予定だ。半導体不足の現状を受け、「当初の発表よりも1四半期早い稼働開始となる」(同氏)。SiCパワー半導体も、フィラッハの新工場で製造される。
オーストリア・フィラッハの300mmウエハー対応の新工場 出典:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン(クリックで拡大)
半導体不足は2022年Q2に解消か、Gartnerが予測
ガートナー ジャパンは2021年5月11日、記者説明会を開催し、2021年の半導体市場の予測や、半導体不足解消の見通しについて語った。Gartnerのリサーチ&アドバイザリ部門で半導体/エレクトロニクス・グループのディレクターアナリストを務める山地正恒氏によると、Gartnerは、半導体の供給難は2022年第2四半期に解消するとみている。
InfineonとNXP、寒波で停止していた工場を再開
Infineon Technologies(以下、Infineon)とNXP Semiconductors(以下、NXP)は、米国テキサス州オースティンにある半導体工場の生産を再開したと発表した。両社は、2021年2月の激しい寒波による被害を受けて運用を停止していた。
Infineonと昭和電工、SiC材料の供給で契約
Infineon Technologies(以下、Infineon)は2021年5月6日(ドイツ時間)、昭和電工と、エピタキシーを含む広範囲なSiC材料の供給契約を締結したと発表した。これによりInfineonは、SiC製品の需要拡大に対応するための基材を確保できたと述べている。契約期間は2年間で、延長のオプションがある。
半導体不足という「有事」が問うニッポン半導体産業のあるべき姿
2021年2月6日付の日本経済新聞1面に「半導体『持たざる経営』転機 有事の供給にリスク」という記事が掲載された。昨今はこの記事以外にも半導体業界に関する記事が注目を集めているようで、この業界に長らく関わっている筆者としてもありがたいことだ。ただ、半導体業界関連の記事をよく読んでみると「そうかな?」と首をかしげる記事も少なくない。冒頭に挙げた記事も、分かりやすく簡潔にまとまっているように見えるが、逆にまとまり過ぎていて、筆者の主張したいことが多々こぼれ落ちているように読めた。そこで、今回は半導体産業のあるべき姿について、私見を述べさせていただくことにする。
過酷な環境下のIGBTモジュールの寿命を20年以上に
Infineon Technologies(インフィニオン・テクノロジー)はオンライン開催となったパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Europe digital days 2020」(2020年7月7〜8日、ドイツ時間)に出展。過酷な環境下での20年以上の寿命を実現するIGBTモジュール「EconoPACK+モジュール」などを紹介した。
三菱電機、パワーデバイス製作所に開発試作棟建設
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