5Gの導入は、5Gの必須プロトコルと機能を管理するPHYソフトウェアにかかっている。ほとんどの半導体ベンダーは物理層のリファレンスソフトウェアを提供しているが、通常は顧客が時間をかけて独自の実装を開発する必要がある。これは、Open RAN技術の導入を検討している企業が特に懸念していることだ。
Ravuri氏は、「現在、ほぼ全てのハードウェア企業はハードウェアのみに対応していて、PHY層は顧客に委ねられている。当社は、これを問題視している。こうしたやり方では、顧客はEricssonやNokiaだけになってしまうだろう」と述べている。
EdgeQは、ビームフォーミングやチャンネル推定、Massive MIMO、干渉キャンセルなどの機能を含む、追加設定なしで導入可能なチップ向けに本番環境のPHYソフトウェアを開発した。独自の差別化を図りたい顧客のために、EdgeQのPHY層はプログラマブルかつ拡張可能になっており、インダストリー4.0から通信事業者グレードのマクロセルまで、さまざまな5Gアプリケーションに対応できるという。
EdgeQは、「Silicon-as-a-Service」モデルを運用している。顧客は必要最低限の5G機能を実装したチップを安価に購入して、最新のファームウェアを介して提供される、より高度な機能(低遅延のAR/VRや位置情報サービス、RANの共有、スライシング、機械学習、カスタム機能など)を利用するかどうかを、時間をかけて検討することができる。
Ravuri氏は、「5Gは幅広く導入される技術ではあるが、多くの企業が何に使うかも分からない高度な機能に先行投資したくはないと考えているのは確かだ」と述べている。
追加機能は「従量課金制」で、不要になれば利用を停止できるため、顧客はコストを削減できる。
このビジネスモデルに対して、顧客はどのように反応しているのだろうか。
Ravuri氏は、「あつれきや抵抗があることも予想していたが、特に(ビジネスモデルについてのネガティブな反応は)なかった。確かに、顧客のサプライチェーンはこのようなチップに対応していない。ある顧客はこうしたモデルに興味はあったが、このようなモデルで半導体ベンダーを運営した経験がなく、運用方法が分からないと語っていた。従来は、必要な機能に対して定額料金を支払う方法を採る形が普通だった」と述べている。
EdgeQは既に、“北米の大手OEM”のデザインウィンを獲得しており、同OEMはEdgeQチップの製品化を確約しているという。
EdgeQは120人の従業員を抱え、米国カリフォルニア州サンタクララとサンディエゴ、インドのバンガロールにオフィスを構えている。EdgeQのチップと評価ボード、PHYソフトウェアは、サンプルの入手が可能だ。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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