後編となる今回は、1本のスーパービアがブロックするトラック数を減らしたときに生じる問題と、その解決策を述べる。
(ご注意)今回は前編の続きです。まず前編を読まれることを推奨します。
前編では、「スーパービア(supervia)」が抱える本質的な課題を説明した。中間配線層のレイアウトがスーパービアによって阻害されるという問題である。前編では1本のスーパービアがブロックする配線数(トラック数)を増やしたときに生じる問題を具体的に説明した。配線混雑度の上昇と、レイアウト設計ツールが検出するルール違反(DRC違反)の増大である。
後編では、1本のスーパービアがブロックするトラック数を減らしたときに生じる問題と、解決策を述べる。想定しているのは、垂直(縦)方向に平行直線状の第1層金属配線(M1)と第3層金属配線(M3)をレイアウトし、水平(横)方向に平行直線状の第2層金属配線(M2)をレイアウトする論理回路セル(スタンダードセル)である。トラックの高さは5トラック(5T)。ナノシート構造のトランジスタと埋め込み電源(BPR)を採用している。スーパービアはM1とM3をダイレクトに接続する。すなわちスーパービアによってM2がブロックされる。
配線レイアウトの自由度をなるべく高くするためには、ブロックするトラック数は少ないことが望ましい。1本のスーパービアがブロックするM2のトラック数が最も少ないのは、1トラック(1本)である。そこでブロックするトラック数を、1トラックから順番に2トラック、3トラックと増やしていく。これらの条件で第1層(M1)から第3層(M3)までの多層配線構造を試作し、スーパービアの特性を測定した。
特に重視したのは、スーパービアとM2の絶縁抵抗である。絶縁抵抗(リーク電流)を測定したところ、ブロックするM2が1トラックの場合は75%のスーパービアが短絡不良を生じた。ブロックするM2が2トラックでも、10%のスーパービアが短絡不良を起こしている。3トラックになると、ようやく短絡不良が目立たなくなる。
この結果から、少なくとも3トラックのM2をブロックすべきであることが分かる。また前編で述べたように、4トラックあるいは5トラックのブロックは配線レイアウトを阻害することが明らかになっている。取りあえずは3トラックが最適なように見える。
そこで3トラックのM2をブロックしたスーパービアの電気抵抗(ビア抵抗)を、アスペクト比が3のスタックビアと比較したところ、ビア抵抗の中央値はスーパービアがスタックビアの2.4分の1と大幅に低かった。スーパービアは、ビア抵抗の低減技術として十分に期待できる。
(次回に続く)
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