DTCOが必須となった大きな理由は、デバイスの3次元化である。具体的には、22nm/16nm世代のCMOSロジックでFinFET(フィンフェット)を導入したことによる。それまでのプレーナー型MOSFETではゲートおよびチャンネルの平面的な寸法を詰めること(加工寸法の短縮)が高密度化の主な手法だった。しかしFinFETではゲート(およびチャンネル)はあまり短くならない。フィンの寸法(幅と高さ、ピッチ)、それから最下層付近の金属配線ピッチがトランジスタの密度を左右する。
加工寸法(設計ルール)の短縮だけでなく、新たな要素技術を追加することよってトランジスタ密度を高め、その効果をレイアウト設計の段階で確認する必要が生じた。設計ルール(DR:Design Rule)とプロセス条件の2つのプロセス・ウインドウから、「消費電力と性能、シリコン面積(PPA:Power、Performance、Area)」のバランスが最適となるポイント(条件)をシミュレーションによって探索する。
最先端のCMOSロジックは数多くの要素技術によって構成されている。採用する要素技術は、技術ノードの進化とともに増加していく。トランジスタ材料ではシリコンとゲルマニウムが既に使われている。将来は化合物半導体や2次元材料などが加わる可能性がある。トランジスタ技術ではナノシート構造やフォークシート構造、さらにはコンプリメンタリ構造が将来の候補となっている。トランジスタ間を相互接続する回路だと、ルテニウム配線やスーパービア、埋め込み電源/接地配線、埋め込み電源分配などの要素技術が控える。回路ブロックやマクロセルなどのサブシステムでは、2.5次元集積化技術と3次元集積化技術が導入されつつある。
これらの要素技術はお互いに影響し合う。5nm以降の技術ノードでは、基本セルよりも大規模な回路ブロックでPPAの最適化をあらかじめ詰めておく必要がある。この新たな最適化を支えるのが「システム・製造協調最適化(STCO:System Technology Co-Optimization)」と呼ばれる手法だ。詳しくは次回に述べたい。
(次回に続く)
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