東北大、平面型単一素子で3次元磁場ベクトル検出:Fe-Snナノ結晶薄膜素子を用い
東北大学金属材料研究所の塩貝純一助教らによる研究グループは、磁気センサーの基盤材料として注目される強磁性体Fe-Snナノ結晶の薄膜素子を用い、平面型単一素子でも3次元磁場ベクトルの検出が可能なことを実証した。
東北大学金属材料研究所の塩貝純一助教と藤原宏平准教授、野島勉准教授、塚﨑敦教授らの研究グループは2021年10月、磁気センサーの基盤材料として注目される強磁性体Fe-Snナノ結晶の薄膜素子を用い、平面型単一素子でも3次元磁場ベクトルの検出が可能なことを実証したと発表した。3次元磁気センサーの小型化や新たな機能性センシング素子の開発につながるとみられる。
磁気センサーは、磁場の大きさと方向を電気的な信号に変換するデバイスで、磁気メモリの読み出しや電子コンパス、移動体の位置や速度検出などに用いられている。ただ、3方向の磁場ベクトルを検出するには、3個の磁気センサーを各方向に配置する必要があるなど、小型化や低消費電力化といった点で課題もあったという。
研究グループはこれまでの研究で、Fe(鉄)とSn(スズ)による強磁性ナノ結晶薄膜を用い、巨大な異常ホール効果を観測してきた。今回はスパッタリング法を用いて、サファイア単結晶基板上にFe-Snナノ結晶とSiOxキャップ層の薄膜を積層。この基板を幅10μmのホールバー形状に加工した試料を作製し、磁場中の電気抵抗特性を評価した。
磁場ベクトルを3次元的に検出するには、「大きさ」と「天頂角」そして「方位角」をそれぞれ決定する必要があるという。Fe-Snホールバー素子は、ホール抵抗が磁場のz軸成分に比例した出力を示すことから、磁場の天頂角として検出することができる。また、素子の縦抵抗は、磁場の方位角に対して360度対称の一方向性磁気抵抗効果を示すことが分かった。180度対称の異方性磁気抵抗効果と組み合わせれば、方位角を決めることができることを実証した。
磁場の大きさは、縦抵抗の磁気抵抗効果の大きさから求められる。これらの結果から、素子のホール抵抗と縦抵抗を同時に測定すれば、平面型単一素子でも3次元磁場ベクトルの検出が可能なことを実証した。
左図はFe-Sn薄膜積層構造の断面図や、素子構造と電気抵抗測定の配置図、磁場ベクトルの模式図。右図は異常ホール効果の天頂角依存性や、一方向性磁気抵抗効果および、異方性磁気抵抗効果の方位角依存性を示すデータ 出所:東北大学
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