欧州委員会委員長であるUrsula von der Leyen氏が2021年9月15日(現地時間)、一般教書演説の中で、「European Chips Act(欧州半導体法)」の策定に関する発表を行った。中国政府が半導体イノベーションに数十億米ドル規模の資金を投じていることや、米国議会が半導体の戦略的価値について合意に達したことなどを受け、EUは、主体的な最先端技術の実現を目指す法案を策定し、競争に参入していく考えを表明した。
半導体は今や、“法定通貨”としての位置付けを確保するまでになった。このため、中国や米国、欧州において、技術主権を追求することの重要性が高まってきている。
欧州委員会委員長であるUrsula von der Leyen氏が2021年9月15日(現地時間)、一般教書演説の中で、「European Chips Act(欧州半導体法)」の策定に関する発表を行った。中国政府が半導体イノベーションに数十億米ドル規模の資金を投じていることや、米国議会が半導体の戦略的価値について合意に達したことなどを受け、EUは、主体的な最先端技術の実現を目指す法案を策定し、競争に参入していく考えを表明した。
von der Leyen氏は、「われわれは、アジア製の最先端半導体チップに依存している。これは、単なる競争力の問題ではない。技術主権に関する問題だ」と述べた。
ただし、資金調達レベルや生産スケジュールなどに関する詳細は明らかにされていない。
同氏は、「欧州の半導体イニシアチブは、米国の取り組みと同様に、半導体の製造をはじめとする半導体エコシステムの構築を目指していく」と強調した。いずれも、サプライチェーンの混乱とアジア製品への過度な依存の問題に対処するためのものだ。また中国も、欧米の最先端ロジックデバイスメーカーへの依存度を下げながら、同時に台湾の巨大半導体メーカーへの依存も抑制していきたいと考えている。
European Chips Actは、2021年7月に発表されたもう1つの半導体イニシアチブである「European Alliance on Semiconductors」をベースとして構築されている。こうした取り組みや、その他のさまざまな動きを見ると、欧州が今後、「デジタル化の10年間(Digital Decade)」の実現に向けた基礎を構築していく上で、EUのリーダーたちが、アジアの半導体メーカーへの依存度を下げようと努力していることがよく分かる。
半導体業界のグローバルな性質を考慮すると、欧州同盟や、TSMCをはじめとする主要サプライヤーが、それぞれ独自の方法で戦略的半導体技術を進展させていけるかどうかは不明だ。TSMCは、中国からの圧力に対する防衛手段として、一部の製造能力を米国に移転させる計画を進めている。
欧州域内市場を担当する欧州委員会コミッショナーThierry Breton氏は、ブログに投稿した記事の中で、ベルギーimecや、フランスCEA-Leti(フランス原子力庁の電子情報技術研究所)、ドイツFraunhofer Society(フラウンホーファー研究機構)などを取り上げながら、欧州の研究開発能力の高さを強調している。また、国際的な協業体制の必要性についても認識しており、「この欧州内で、全てのものを自力で製造しようとしているわけではない」と付け加えている。
それでも同氏は、「欧州の技術主権は、European Chips Actを実行することによって実現可能になる」と主張する。
半導体業界グループは現在、設計ツールやウエハー、製造装置などの四半期受注が記録的に伸びたことで波に乗っており、欧州半導体イニシアチブについて称賛の声を上げている。SEMIのプレジデント兼CEOであるAjit Manocha氏は、「このような取り組みを透明性をもって実施することで、業界関係者は、世界の半導体産業のレジリエンス(回復力)を強化し、より強固なサプライチェーンを構築する機会を得られる」と述べる。
「現在の半導体不足によって、半導体製造装置や材料のリードタイムは悪化している。支援などのインセンティブは、新規および既存の半導体製造装置、材料設備への投資にも適用されるべきだ」(同氏)
そのため欧州は、2nmプロセスノード以降のチップ製造に向けたメガファブ(巨大工場)の建設にも取り組もうとしている。電気自動車(EV)の普及に伴い、エネルギー効率の高いICの開発も重要な課題となっている。
EUの取り組みは、米中ハイテク戦争が勃発して以来、技術アナリストたちが強調してきたことを裏付けるものでもある。Center for Strategic and International StudiesのJames Lewis氏は、米国EE Timesのポッドキャスト(2020年8月7日)で、「半導体が戦略的な産業であることを誰もが認識している」と指摘した。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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