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東京工大ら、SOT-MRAM素子の原理動作実証に成功トポロジカル絶縁体とMJTを集積

東京工業大学と米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校を中心とした国際研究チームは、トポロジカル絶縁体と磁気トンネル接合(MTJ)を集積したスピン軌道トルク磁気抵抗メモリ(SOT-MRAM)素子を試作し、読み出しと書き込みの原理動作を実証した。

» 2021年11月05日 09時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

超低消費電力SOT-MRAMの開発を加速

 東京工業大学工学院電気電子系のファム・ナムハイ准教授と米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校のカン・ワン教授を中心とした国際研究チームは2021年10月、トポロジカル絶縁体と磁気トンネル接合(MTJ)を集積したスピン軌道トルク磁気抵抗メモリ(SOT-MRAM)素子を試作し、読み出しと書き込みの原理動作を実証したと発表した。

 MRAMは、不揮発で高速動作、耐久性に優れるなど、さまざまな特長を備えたメモリである。現行の製品は書き込み技術として、「スピン・トランスファー・トルク(STT)法」を用いているが、この方法だとデータを書き込む時のエネルギーが従来の揮発性メモリに比べ1桁大きい、などの課題があった。

 ファム准教授らは、スピン軌道トルク(SOT)を用いた磁化反転の技術に着目した。SOT-MRAMは、スピンホール効果のスピンホール角(θSH)が「1」以上で、高い電気伝導性を持つスピンホール材料を開発することができれば、メモリ素子の磁化反転に必要な電流を1桁、エネルギーを2桁以上も下げることができるという。

 そこで、スピンホール材料としてθSHが小さい重金属(タンタルやプラチナ、タングステンなど)に代わり、スピンホール角の大きいトポロジカル絶縁体が検討されてきた。しかし、MRAMでトポロジカル絶縁体と磁気トンネル接合を集積するための技術は、これまで確立されていなかったという。

 共同研究チームは今回、3端子のSOT-MRAM素子を作製するため、以下の製造プロセスを用いた。まず、下部電極には、分子線エピタキシャル結晶成長法により製膜をした(Bi、Sb)2Te3トポロジカル絶縁体または、スパッタリング法により製膜をしたBiSbトポロジカル絶縁体を配置した。そして、中間層にトポロジカル絶縁体と似た結晶構造を持つRu(5nm)を、その上にCoFeB(2.5nm)/MgO(2nm)/CoFeB(5nm)のMTJを製膜。その後に、250〜300℃の温度で熱処理を行い、磁性層のCoFeBを結晶化させた。

 試作したSOT-MRAM素子はサイズが4×8μm2〜100×200nm2と小さい。スパッタリング法のみで作製したBiSbトポロジカル絶縁体‐磁気トンネル接合のSOT-MRAM素子(1×3μm2)を用いて、トンネル磁気抵抗効果を測定した。この素子は250℃で熱処理を行ったが、90%という比較的高い抵抗変化を達成。また、スピン軌道トルクによる低電流密度の書き込みにも成功した。

上図は3端子SOT-MRAM素子の模型と素子の写真、下図はスパッタリング法のみで作製したBiSb-MTJ素子のトンネル磁気抵抗効果と、スピン軌道トルクによる書き込みの実証[クリックで拡大] 出所:東京工業大学他

 今回の研究成果により、トポロジカル絶縁体と磁気トンネル接合を集積した素子を作製し、読み出しと書き込みの原理動作を初めて確認することができたという。

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