エイブリックは2021年11月2日、「業界最小」(同社)のオフセット電圧±5mVおよび小型パッケージを実現した車載用ボルテージトラッカ「S-19720 シリーズ」を開発し、販売を開始したと発表した。車載オフボードセンサーの精度向上や車載機器の省面積化が可能となるもので、同社は2027年度に年間800万〜900万個の販売を目指す。
エイブリックは2021年11月2日、「業界最小」(同社)のオフセット電圧±5mVおよび小型パッケージを実現した車載用ボルテージトラッカ「S-19720シリーズ」を開発し、販売を開始したと発表した。車載オフボードセンサーの精度向上や車載機器の省面積化が可能となるもので、同社は2027年度に年間800万〜900万個の販売を目指す。
ADAS(先進運転支援システム)やAD(自動運転)の開発が加速し、クルマに搭載されるセンサーの数も増加し続けている。車載センサーの多くは基板をMCUと別にするオフボードセンサーであり、オフボードセンサーとMCUの電源を共通とした場合、基板間を接続するワイヤハーネスで発生する意図しない天絡や地絡によってMCUに悪影響を及ぼすリスクがある。そのため、オフボードセンサーの電源には別のLDOやボルテージトラッカを用い、MCUの電源と分離することが求められる。
ただ、オフボードセンサーの電源にLDOを使用した場合、たとえMCU用のものと同じ設定電圧の同一品番を選んだとしても、それぞれが持つ製造ばらつきや受ける温度変化、電流の変化により出力電圧が異なった値となってしまい、センシングの精度に悪影響を及ぼすことになる。一方、ボルテージトラッカは、出力電圧がADJ端子入力電圧に追従するためオフセット電圧を小さくでき、センサーの読み取り精度を向上できる、という特長がある(下図参照)
同社が今回発表したS-19720シリーズは、このオフセット電圧を「業界最小」(同社)という±5mVにまで抑えたうえ、サイズもHSNT-6(2025)パッケージ(1.96×2.46×t0.5mm)と小型化し、36V動作、50mA出力のボルテージトラッカとして「業界最小」(同社)を実現。「センサー読み取り精度向上や搭載部品の増加するECUの省スペース化に貢献する」としている。
また、パッケージに関しては、「小型であることも強みだが、アウターリードパッケージなため、実装後の自動外観検査も容易になるというメリットも提供できる」としている。なお、パッケージは競合品からの置き換えなどを狙いSOT-23-5(2.8×2.9×t1.3mm)でも提供する。
S-19720シリーズはさらに、動作時消費電流が30μA、パワーオフ時消費電流が4μAと小さい。このほか、過電流保護回路、サーマルシャットダウン回路に加え、逆流電流防止機能も内蔵。信頼性、安全性を向上するほか、部品定数削減や低コスト化にも貢献する。また、PPAP(生産部品承認プロセス)に対応しており、車載用ICの品質規格「AEC-Q100」にも対応予定だという。
同社の説明担当者は、「当社は、時計用IC開発からスタートしており、『小型』』『低消費』の思想が染み付いている。今回の製品は当社初のボルテージトラッカだが、これまで培ってきた小型、低消費のノウハウを生かすことで実現できた」と語っていた。
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