日本のシェアが高いものを分類すると、図5のようになる。ポイントは2つある。
第1に、液体(または気体などの流体)に関係する装置や材料のシェアが高い。第2に、熱をかけて固めた材料や部品のシェアが高い。
第1の分類は、さらに2つのカテゴリーに分けられる。一つは、ウエハが回転する枚葉式の装置とそれに使われる液体材料である。具体的には、コータ・デベロッパとレジスト、CMP(ロジック用)とスラリ、枚葉式洗浄装置と各種薬液である。黄色い矢印は相関関係があることを示している。
もう一つは、ウエハは回転しないが、装置内部で液体や気体が循環(つまり回転)する装置である。それは、バッチ式洗浄装置と縦型拡散炉である。
この縦型拡散炉には、石英部品が多数使われる。この石英部品は、圧倒的に日本のシェアが高い。同じようなものとして、シリコンウエハと各種セラミックス部品がある。これらに共通するのは、熱をかけて固めた材料や部品であるということだ。
このように、日本のシェアが高い装置、材料、部品を分類してみると、どちらかと言えば、日本は「物理より化学」がモノを言う領域で強みを発揮していると言える。
一方、日本のシェアが低い装置を分類すると、図6のようになる。一言でいうと、基本的にドライな装置の日本シェアは低い(ただしArF液浸は除く)。ここでもポイントは2つある。
第1に、光や電子ビームを使う装置の日本シェアは低い。それは、各種検査装置や各種露光装置である、ここで、CD-SEMは日本のシェアが高いので、この分類では例外となる。
第2に、プラズマを使う真空装置に関係する日本のシェアは低い。具体的に言うと、ドライエッチング装置、CVD装置、PVD装置(スパッタ装置)であり、加えて最先端露光装置であるEUV(極端紫外線)露光装置もこの分類に入ってくる。
これらの装置の特徴としては、ウエハはステージにチャックされて動かない。動いたとしてもXY軸方向のみであり、回転はしない。そして、どちらかというと、「化学より物理」的な要素が強い装置の日本シェアが低いと言える。
ここまで、日本のシェアが高いものと低いものについて、具体的なシェアを示したうえで、分類を行った。以下では、なぜ、このようになるのかを分析してみたい。
なお、この分析を行うに当たって、各種製造装置や材料の専門家20人に、「なぜその装置や材料のシェアが高い(低い)のか?」という内容のインタビューを行った。その際に、非常に示唆に富む見解を多々聞かせて頂いた。筆者の主張とその見解をまとめると図7のようになる。
まず、日本のシェアが高いものは、液体、流体、粉体を扱う場合が多く、最初の形が決まっておらず、「ふわふわ」している。そのため、最適化するためのパラメータが多くて非常に複雑である。そのような中で、日本人は経験や直感によって最適解を見いだしている。そのプロセスは、マニュアル化できない暗黙知やノウハウが多く、結果として、巧の技や職人芸のようになることもある。
そしてこれらは、現場の継続的な改善・改良がモノを言う世界であり、真面目で忍耐強い日本人が細かなところまで部分最適化する。その結果、ボトムアップによって装置、材料、部品がつくられることになる。このような、日本人的な特徴が高いシェアの源泉になっていると考えられる。
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