そのファウンドリーの2021年と2022年の売上高シェアの予測を見てみよう(図4)。シェア1位のTSMCは2022年にさらにシェアを伸ばして57%になると予測されている。2位のSamsung Electronics(17%)、3位の台湾UMC(7%)のシェアには変動がない。4位の米GlobalFoundries(GF)は1%シェアを下げて5%になり、5位の中国SMIC(5%)のシェアは変わらない。
では、上記のファウンドリーで28nmを生産できるところはどこか?(図5) TSMCが2011年から28nmの量産を開始した。翌2012年、SamsungとUMCが28nmの量産を開始した。2013年にはGFが、2015年にSMICが、2018年にはHH Grace(中国)が、それぞれ、28nmの量産を開始した。
ここで注意が必要なのは、Samsungのファウンドリーは、主として自社のスマートフォン「Galaxy」用のプロセッサの生産を目的としているため、次々と微細化を進めており、レガシーな半導体の生産は止めてしまうということである。従って、現在、Samsungは28nmの半導体を生産できないだろう。
となると、世界的に逼迫している28nmの半導体をつくれるのは、TSMC、UMC、GF、SMIC、HH Graceの5社ということになる。しかし、図4で見た通り、ファウンドリーの売上高シェアの過半以上をTSMCが独占している。従って、世界的に需要が拡大している28nmの生産委託が殺到しているのは、TSMCであると言えよう。
ここまでをまとめると、コロナ禍によってニューノーマルが定着し、ノートPC、ゲーム機、ウェアラブルなど各種電子機器が爆発的に売れるようになった。そして、それら電子機器に使われている半導体需要が急拡大した。その中でもコストパフォーマンスに優れ、十分な性能がある、プレーナ型トランジスタの最後の世代の28nmが世界的に不足していると考えられる。
要するに、28nmの半導体がスイートスポットになっている(マッキンゼーが主張した16nmはSADPを駆使したFinFETであるためスイートスポットになり得ない)。そして、この28nmの大部分がTSMCに生産委託されており、TSMCの28nmのキャパシティがボトルネックになっていると推測できる。
図6に、TSMCのテクノロジーノードごとの四半期売上高を示す。UMC、GF、SMICなども工場をフル稼働しているだろうが、世界的にTSMCの28nmのキャパシティが最も大きい。ここに、世界中から生産委託が集中している。飛躍的に28nmのキャパシティを拡大するためには、工場を新設するしかない。しかし、TSMCには、その余裕がないことを以下で説明する。
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