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もみ殻中のガラスを用いてSi量子ドットLEDを開発合成したSiQDの発光効率は21%

広島大学の研究グループは、もみ殻中のガラス(SiO2:シリカ)からオレンジ色に発光するシリコン量子ドット(SiQD)を合成し、これを用いてSiQD LEDを開発した。

» 2022年02月09日 10時30分 公開
[馬本隆綱EE Times Japan]

試作したSiQD LEDの大きさは2cm2、発光面積は4mm2

 広島大学の研究グループは2022年2月、もみ殻中のガラス(SiO2:シリカ)からオレンジ色に発光するシリコン量子ドット(SiQD)を合成し、これを用いてSiQD LEDの開発に成功したと発表した。

 イネ科の植物は多くのSiO2を含んでいる、特に、世界で年間1億トンも排出されるもみ殻は、重さの20%がSiO2といわれている。2013年には、このSiO2がリチウムイオン電池の有効な材料になることを、スタンフォード大学の研究者が報告した。しかし、もみ殻を原料としたLEDの製造はこれまで報告されていないという。

 ディスプレイ市場では、タブレット端末や大型TV向けに量子ドットディスプレイが注目されている。量子ドットは色彩が鮮やかで、発色がきれいなためである。ところが、市販されている現行の量子ドットディスプレイには、重金属の量子ドットが含まれているため、その毒性が懸念されている。これに対し、重金属を含まないシリコン量子ドットは、発光効率が低いなどの課題があった。

 研究グループはこれまで、「三原色発光するSiQD」や「白色発光するSiQD」「青色SiQD LED」「コストを380分の1に抑えるSiQDの製造法」などを開発してきた。2022年1月には、「発光効率が80%という世界トップレベルのSiQD合成と、それを用いた赤色SiQD LEDの開発」を発表した。

 今回は、これまでの研究成果をベースに、もみ殻を原料としてSiQDを合成した。オレンジ色に発光するSiQDの発光効率は21%と高い。このSiQDを用いてLEDを開発した。

 SiQD LEDの製造手順はこうだ。まず、もみ殻を酸処理して、無機物の不純物を除去する。それを電気炉で焼き、シリカを取り出す。得られたシリカをマグネシウムの粉末と混ぜて加熱、酸化還元反応をさせて多孔質性のシリコン粉末を得る。この時、シリカおよび多孔質シリコンの収率はそれぞれ100%および86%であった。

 次に、多孔質シリコンを酸処理してナノサイズまで微小化させる。これに紫外線を照射したところ、オレンジ色に発光した。表面の水素を炭化水素基(デシル基)に置換して、分散性や耐久性、発光効率を高めたのがSiQDである。SiQD LEDは透明電極付きガラスに、電荷が流れる多層膜を形成している。製造は真空フリーで低温の溶液プロセスで行えるなど簡便である。

左側は上図が稲穂およびもみ殻と構成成分、中図はもみ殻とシリカ、シリコン粉末、下図はもみ殻シリカとシリコン量子ドット。右側は上図がオレンジ発光する水素修飾のシリコン量子ドットとオレンジ発光する炭化水素修飾のシリコン量子ドット、下図はこれらの発光スペクトルと発光励起スペクトル[クリックで拡大] 出所:広島大学

 作製したLEDの大きさは2cm2で、発光面の面積は4mm2である。点発光の一般的なLED(砲弾型)に比べて、約40倍の発光面積に相当する。今回の研究では、「発光メカニズムの解明」や「表面構造の特定」「発光色の可変性」「結晶性評価」および、「LEDの性能評価」なども行ったという。

上図はシリコン量子ドットLEDの作製手順、下図左はもみ殻を原料にして作製したシリコン量子ドットLED、下図右はシリコン量子ドットのELスペクトル 出所:広島大学

 今回の研究成果は、広島大学大学院生の寺田詩歩氏(理学研究科博士課程前期修了)、植田朋乃可氏(先進理工系科学研究科博士課程前期)および、自然科学研究支援開発センター(研究開発部門)の齋藤健一教授らによるものである。

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