RFトランシーバー回路の大幅な小型化を実現、ルネサス:「コロンブスの卵的発想」で生まれた新技術(2/2 ページ)
もう1つの新技術SIQCは、従来のキャリブレーション回路を不要にすることでさらなる回路面積削減などを実現するものだ。
RFトランシーバー内部では、4つの異なる位相を持つ基準信号を用いて無線信号を低周波ベースバンド信号に変換するが、この精度が悪いと受信特性の劣化を招くため、従来では位相のずれや振幅のずれを補正するキャリブレーション回路を用いている。しかし、このキャリブレーション回路を内蔵するためにチップ面積や消費電力が大きくなるほか、テストコストが増加する、という課題があった。
そこで同社は今回、従来のように「ずれを検知して補正する」のではなく、簡単なラッチ回路を追加し、4つの異なる位相を持った基準信号を互いに補正し合うことで位相誤差をキャンセルするという新しい発想の回路方式を開発した(下図)。この方式であれば、ずれの検知などをする必要がなく、補正を小規模な回路で実現できるため、従来のキャリブレーション回路に比べ約12分の1と大幅な回路の小型化が可能という。
キャリブレーション回路不要の基準信号自己補正回路技術(Self IQ-phase Correction、SIQC)の概要[クリックで拡大] 出所:ルネサス エレクトロニクス
なお、試作チップの評価をしたところ、受信特性で重要なイメージ信号除去比は平均で39dBが得られ、「Bluetooth規格に対して十分なマージンを取れることを確認した」としている。
SIQCのシミュレーション結果(左)と試作チップの評価結果(右)[クリックで拡大] 出所:ルネサス エレクトロニクス
開発担当者は、「今回の技術は、既存技術のようにシステムとして絶対的に補正するのではなく、位相間で相対的に調整できればいいという発想の転換で実現することができたものだ」と語っていた。
- 買収で製品群はさらに豊富に、ルネサスの産業事業は新たな成長段階へ
2021年8月に英Dialog Semiconductorの買収を、そして同年12月にはイスラエルCeleno Communicationsの買収を完了したルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)。これらの買収により、ルネサスでは産業向け事業がさらに強化されることになった。ルネサスのIoT・インフラ事業本部(IIBU)でエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるSailesh Chittipeddi氏に、買収によるシナジーや、同事業本部の戦略について聞いた。
- ルネサス、2021年12月期業績を発表
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2022年2月9日、2021年12月期(2021年度)通期決算を発表した。業績(Non-GAAPベース)は、売上高が9944億円(前年比38.9%増)、営業利益2966億円(同215%増/営業利益率は29.8%)、純利益は2222億円(同119%増)と、大幅な増収増益となった。
- ルネサス、Bluetooth 5.3 LE対応マイコンを発表
ルネサス エレクトロニクスは、Arm Cortex-Mコア搭載の32ビットマイコン「RAファミリ」として、「Bluetooth 5.3 Low Energy(LE)」規格に対応したマイコンを新たに開発中と発表した。2022年第1四半期(1〜3月)からサンプル出荷を始める予定。
- ルネサス、Bluetooth 5.0対応低電力マイコンを発売
ルネサス エレクトロニクスは、消費電力が極めて小さい32ビットマイコン「REファミリ」として、Bluetooth 5.0に対応した「RE01B」を新たに発売した。環境発電や小型電池で長時間動作が求められる小型ヘルスケア機器などの用途に向ける。
- Dialog買収でIoTを強化、「短期間で成果出す」ルネサス
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2021年2月8日、英Dialog Semiconductor(以下、Dialog)を買収することで合意したと発表した。Dialogの発行済みおよび発行予定の普通株式全てを取得し、完全子会社化する手続きを開始する。1株当たり67.50ユーロで取得する予定で、買収総額は約4886万ユーロ(約6157億円)となる見込みだ。
- ルネサス、32ビットマイコン「RA4M2グループ」発売
ルネサス エレクトロニクスは、Armコアを搭載した32ビットマイコン「RAファミリー」のRA4シリーズとして、新たに「RA4M2グループ」を発売した。コストや消費電力の削減が求められる産業機器やIoT(モノのインターネット)機器の用途に向ける。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.