ファブレス半導体企業のOrca Systemsは、IoT(モノのインターネット)センサーを低軌道(LEO:Low Earth Orbit)衛星に直接リンクできるSoC(System on Chip)「ORC3990」を発表した。
ファブレス半導体企業のOrca Systemsは、IoT(モノのインターネット)センサーを低軌道(LEO:Low Earth Orbit)衛星に直接リンクできるSoC(System on Chip)「ORC3990」を発表した。
IoTアプリケーションを展開する企業は、接続性に関して無線セルラーネットワークに依存する傾向があるが、地球は同ネットワークの範囲に適さない地域や、特に海など完全に範囲外の地域が広大である。加えて、実際にはそれほど遠くない場所でもサービスエリアに含まれない場所もある。
Orca SystemsのCOO(最高執行責任者)であるBrian Sprague氏は、米国EE Timesとのオンライン取材の中で「当社の製品は、宇宙にあるLEO衛星と直接通信するものだ」と述べた。
Sprague氏は「ORC3990は当社が初めて開発したチップで、2022年末には生産段階に入る見込みだ」と述べた。このSoCは独自のモデムとネットワークプロセッサ、アプリケーションプロセッサで構成されており、RAMとROMを搭載している。Sprague氏は「そのため、このデバイスのプロセッサの外側にはメモリは1つもない。それにより、高い安全性がもたらされる」と述べた。
搭載するIoTトラッカーの設計は、このデバイスのために確立されたという。顧客は外部のアナログまたはデジタルセンサーをこのSoCに接続することもできる。
Orca Systemsは、衛星関連企業のTotum向けにこのSoCを開発した。Totumは2022年中に、24基の超小型衛星「Cubesat(キューブサット)」を打ち上げる計画だ。Totumは、Cubesatを用い、宇宙から世界各地のIoT機器を追跡/監視する予定である。
Orca SystemsとTotumは2021年秋、宇宙関連のパートナー企業であるLoft Orbitalと共に、衛星への直接的なIoT接続を初めて実証した。その接続システムは、屋内または屋外のIoT機器を追跡できるものである。例えば、輸送コンテナの追跡、油量計やガス流量計の監視、家畜や群衆の追跡などに対応する。
Sprague氏は「屋内の場合、対象物の位置検出の精度は3m以上になるが、少なくとも『屋内にある』ということは分かる」と述べた。
Totumによれば、ORC3990を用いたソリューションの価格は量産時で10米ドル以下になる見込みだ。Sprague氏によると、単三電池2つで10年相当の寿命を実現するという。
OrcaとTotumは、畜牛から船舶まであらゆるものを宇宙から追跡する衛星に望みを託している。その背景には、セルラーネットワークでは外洋航行の船舶を追跡できないことや、強力で信頼性の高いセルラーネットワークにアクセスできない農場や工場が驚くほど多いという事実がある。
小型のLEO衛星は今や、無数のアセットやモノを追跡するための新たな方法をもたらし始めている。Swarm(2021年夏にSpaceXが買収)や、ORBCOMMのような既存の企業も衛星からのIoTトラッキングを実現しようとしている。
2022年は、SwarmやTotumのような企業にとって、IoTに特化した衛星群を大きく飛躍させる重要な年になるだろう。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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