注目しているのが光インタコネクトである。特にAI/ML/HPCや量子コンピュータ(Quantum Computing)などでは、性能を決定する配線の高速大容量化の要求に応えるため、光技術の利用が考えられている。
光インタコネクトは、1980年代ごろにはOEIC(Opto-Electronic IC)や、IC間およびIC内配線に光伝送を用いることで配線ボトルネックを解消する研究が進められていた。1990年代ごろに多くの電子機器・部品メーカーが参加した多チャンネル集積化光モジュールの世界的ブームが起きた。米国では当時のARPA(Advanced Research Project Agency)がスポンサーとなってAT&T Bell LaboratoriesやIBM Research、Yorktown Heightsなどが参加したOETC(The Optoelectronics Technology Consortium)が設立された。
筆者のところにも、電気の並列伝送の限界を超えるために光に置き換えたいという要求があり、研究所においてモジュールを開発した。事業部で製品設計され、12チャネルSMF低スキュー同期転送光伝送モジュールを「光インタコネクト」と名付けて市場に送り出した。ATM交換機やビデオサーバなどのシステムに搭載されたり、数は少ないが天体電波望遠鏡など通信・コンピュータ以外にも適用されたりした。
光インタコネクトを活発化すべく、電子部品と実装技術の最大規模の学会であるECTC(Electronic Components and Technology Conference)に、当時の日本電信電話(現NTT)の安東泰博氏らと光関連のセッションを立ち上げたのもこのころである。
当時と同様の熱気を、現在感じている。2020年以降、光伝送技術の2つの最大学会OFC(Optical Fiber Communication Conference)とECOC(European Conference on Optical Communication)において毎年CPOはホットなトピックになっているし、「Optical Interconnect」というワードも多く聞かれる。筆者としてはECTCにおいて活発化してほしいと思っている。
1990年代の経験から、ICは電子回路なので、電気配線を置き換えるというのが光インタコネクトの基本だと考えている。高速大容量に加え低コスト化、低消費電力化、小型化が光インタコネクトへの期待である。これに関しては以前、「光トランシーバーのForm Factorの新動向(3) 〜FacebookやMicrosoftが主導するCPO」で紹介した、米国国防省DARPAのG. Keeler氏が示した図を用いて光インタコネクトのねらい目を探索してみたい。
図3は、Keeler氏の図を基に加筆したもので、配線長さと配線の指標(FOM)の動向を示している。高速大容量化などで電気配線がFOMを維持できなくなった距離の配線から、光への置き換えが始まる。
例えば、データセンターネットワークでも電気の限界が起こっていることに注目したい。Direct Attach Cable(DAC)と呼ばれる電気ケーブルにより、Top-of-Rack(TOR)とサーバの間が接続されていた。DACは400G(4x100G)では2〜3mの接続距離であり、800G以降ではさらに接続距離が短くなるため光が用いられると予測されている。
つまり、図3の1〜5mを狙った光モジュールの開発が期待されているのである。現在、短距離で使用されている100m程度のVCSEL/MMF AOC (Active Optical Cable)はFOM=6程度である。図3から、FOM=20のモジュールが提案できないかと思っている。
また、例えばGPO-GPUやGPU-Memoryの配線をDisaggregated Systemでも実現しようとすると、図3からFOM=20〜300を実現すれば光インタコネクトが採用される。光インタコネクトの場合はモジュールはそのままに1m以上に伸ばすことも可能な場合が多い。もちろん、消費電力や形状などの個別指標やコストなどの要求を満足しなければならない。
この光インタコネクトに関しても多くの研究開発が行われており、それを紹介していきたい。キーワードは小型、低消費電力、低コストと「使いやすさ」である。技術としてFEC-free(Very Light FEC)、低BER(<1E-9、できれば<1E-12)、DSP-free(または<5pJ/bit、できれば<1pJ/bit)、高受信感度(低SNDR伝送)、チップ/パッケージ/基板/ファイバ実装などがある。材料としてはポリマーに注目している。ポリマー光導波路やプラスチック光ファイバなどの動向も紹介したい。
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