現時点では、Huaweiは世界最大のインフラベンダーであり、アフリカとアジアの大部分で4Gや5Gを配備している。同社と中国共産党政府との癒着に対する疑惑は、過去10年余りで高まっている。Huaweiは米国から締め出され、英国も2027年までにネットワークからHuawei製の5G機器を排除することを定めた。それ以外の多くの国々もそうした禁止措置を実施または検討中である。
2022年3月、Dell’Oro Groupは、世界の通信機器売上高が2021年に1000億米ドル近くに達したと発表した。主にRANの成長によってけん引されたもので、2017年から20%増加することになる。米国政府によるHuawei製品採用阻止の取り組みがある程度影響しているにもかかわらず、Huaweiは引き続き世界最大の通信機器ベンダーであり続ける見込みだ。
ウクライナ侵攻によって、われわれは通信領域において、新たな種類の冷戦を目の当たりにしているのかもしれない。中国のベンダーがロシアの通信事業者に喜んで5G機器を供給していても、米国による半導体制裁によって、インフラ向けの通信用チップを調達するのは今後一層難しくなるだろう。
Semiconductor AdvisorsのプレジデントであるRobert Maire氏は、「半導体輸出規制がロシアに与える強力な打撃」で「中国の半導体メーカーの能力は限られており、ロシアが他のどこかで得ていたプロセス技術を全て補うことができないのは明らかだ」と語っている。
また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを経て、SMICをはじめとする中国の半導体メーカーは、国内の半導体需要を満たすのに忙しい。
中国のベンダーがロシアの戦争を理由に欧米の顧客への販売を止める可能性は極めて低い。だが、現在の欧米のロシアに対する圧力が、HuaweiやZTEなどの中国ベンダーに対する禁止措置と相まって、東西間の新たな冷戦――“5G冷戦”と呼べるかもしれない――の始まりを告げる可能性はある。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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