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車載で存在感を増すImagination、AIとのシナジーも強化Appleの利用停止通告から4年(1/2 ページ)

25年以上にわたりGPUコアを提供している英Imagination Technologies(以下、Imagination)は、順調に売上高を伸ばし、新しいGPUコアのシリーズを立ち上げ、その製品ラインアップを増やしている。オートモーティブはImaginationにとって中核市場の一つだ。

» 2021年09月07日 13時45分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

車載用GPUコアで高いシェアを持つImagination

 25年以上にわたりGPUコアを提供している英Imagination Technologies(以下、Imagination)。2017年は同社にとって怒涛(どとう)の1年だったに違いない。同年4月に、それまでGPUコアを提供してきたAppleから、GPUコアの利用を2年以内に停止するとの通知を受けた。売上高の多くを占める“超大口顧客”を失うことになったImaginationは、この直後から経営危機がささやかれるようになり、結局同年11月には中国Canyon Bridgeに買収されることが決まった。

 それから4年がたった今、Imaginationは順調に売上高を伸ばし、新しいGPUコアのシリーズを立ち上げ、その製品ラインアップを増やしている。同社の2020年の売上高は1億2500万米ドルで、2019年の8700万米ドルから44%増加した。2021年8月には2021年上半期の業績を発表。売上高は前年同期比で55%増となる7600万米ドルとなっている。ImaginationのIP(Intellectual Property)を登載したチップは累計で110億個出荷されており、モバイル向けGPUコアでは、35.5%のシェアを獲得している。

イマジネーションテクノロジーズの内村浩幸氏

 同社の日本法人であるイマジネーションテクノロジーズの代表取締役を務める内村浩幸氏は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、顧客の製品開発にそれほど影響を与えなかった。そのため、当社も将来を見据えた投資を継続して行うことができている」と語る。

 モバイル分野の印象が強いImaginationだが、オートモーティブ分野にも舵を切っている。実は同社は車載用GPUコア市場で43%のシェアを持っているのだ。Imaginationの顧客であるルネサス エレクトロニクスやTexas Instruments(TI)、ソシオネクストなどが車載用半導体市場でシェアを伸ばしていったという背景もあるが、現在、自動車はImaginationにとって、モバイル、民生機器、データセンターに並ぶターゲット市場の一つとなっている。

ImaginationのGPUコアは、ルネサス エレクトロニクスなどのチップに採用されてきた 出典:Imagination Technologies(クリックで拡大)

「PowerVR」を一新

 現在、Imaginationの製品群は大きく3つに分けられる。グラフィックIP、ニューラルネットワーク用アクセラレーター(NNA)IP、イーサネットパケットプロセッサ(EPP)IPである。

 グラフィックIPは、「PowerVR」のブランドで提供されてきた、言わずと知れたImaginationの主力製品だ。「25年以上の経験がある、競争力のあるプロダクト」だと内村氏は述べる。エントリーレベルからミッドレンジ、ハイエンドまで広くカバーするラインアップを用意していて、車載向けではASIL-Bをサポートする。2019年からはシリーズ名を刷新し、「IMG Aシリーズ」「IMG Bシリーズ」の名称で展開している。

 エントリーのシリーズはモバイル向けを想定していて、ハイエンドのシリーズは、車載用への転換も視野に入れて開発されている。「ADAS(先進運転支援システム)では500GFLOPS以上、自動運転では500TOPS以上といった非常に高い性能が求められる。こうした要求に沿ってGPUコアを開発していく計画だ」(内村氏)

 タイルベースレンダリング技術は、モバイル向けのGPUでは既に一般的になっているが、Imagination独自の「Tile-Based Deffered Rendering(TBDR)」は、高い電力効率と帯域幅効率でタイルベースレンダリングが行える。1つのGPUコアで複数のタスクを実行する「Hyperlane Technology」を備えるシリーズもある。例えば、自動車においては、パネルのディスプレイ表示やナビゲーション画面の表示といったIVI(In-Vehicle Infotainment:車載インフォテインメント)の処理、ドライバーモニタリングの処理などのAI(人工知能)の処理などをHyperlane Technologyを使って1つのGPUコアで処理することが可能だ。

 今後搭載するテクノロジーとして、レイトレーシングが挙げられる。文字通り光の動きを追跡するもので、光の反射や影なども計算して表示するので、写真で撮影したような、よりリアルな質感で表現できるようになる。2021年内にも、レイトレーシング技術を採用した「IMG Cシリーズ」を発表する予定だ。

左=レイトレーシング技術を導入すると、よりリアルな表現が可能になる/右=GPUコアのロードマップ。「IMG Cシリーズ」からレイトレーシング(RT)技術が導入される。「IMG Bシリーズ」の「MC」はマルチコアを指す 出典:Imagination Technologies(クリックで拡大)
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