超低消費電力のAI(人工知能)アクセラレーターを手掛けるスタートアップのSyntiantは、5500万米ドルの資金調達ラウンドを終了し、同社の総調達額は約1億米ドルに達した。同社は2017年の設立以降、新規および既存の投資家に支えられてきた。
超低消費電力のAI(人工知能)アクセラレーターを手掛けるスタートアップのSyntiantは、5500万米ドルの資金調達ラウンドを終了し、同社の総調達額は約1億米ドルに達した。同社は2017年の設立以降、新規および既存の投資家に支えられてきた。
Syntiantは、これまでに2000万個以上のニューラルデシジョンプロセッサ(NDP:neural decision processor)チップを出荷しており、現時点では、相当量のエッジAIチップを出荷している数少ないスタートアップの1つである。
今ラウンドの新規投資家5社のうち1社は、ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)だ。Syntiantとルネサスは2021年夏から、ルネサスのマイクロプロセッサ「RZ/V」シリーズとSyntiantの「NDP120」を組み合わせた「音声制御マルチモーダルAIソリューション」を共同開発している。この設計では、Syntiantの常時オンNDPを使用して、待機電力を非常に低く抑えながら、ルネサスのチップ上で実行されるビジョンベースのさまざまなAIアプリケーションの音声起動を実現する。
ルネサスのIoT(モノのインターネット)・インフラ事業本部長、Sailesh Chittipeddi氏は、声明の中で、「われわれは、ディープラーニングエッジコンピューティングにおけるSyntiantのリーダー的ポジションを活用したコラボレーションで、セキュリティシステムやパーソナルデバイス、産業および製造、輸送、物流などの多くのユースケースにわたり、AIベースの音声およびビジョン処理ソリューションを通じてユーザー体験を向上させている」と述べている。
NDP120は、Syntiantの第2世代AIアクセラレーターコアと、特徴抽出用のTensilicaの「HiFi3」DSP、システム管理用のArmの「Cortex-M0」コアを搭載したSoC(System on Chip)だ。第2世代のSyntiantコアは、複数のニューラルネットワークを同時に実行するなど、前世代よりも大規模なニューラルネットワークに対応する。これには、キーワード/ウェイクワードの検出やスピーカーID、コマンド検出などが含まれる。
SyntiantのCEO(最高経営責任者)を務めるKurt Busch氏は、米国EE Timesの以前のインタビューで、「NDP120は、プラグインスマートスピーカーレベルの性能をバッテリー駆動デバイスで実現できる。これが本製品の真の狙いだ。NDP120は主に、オーディオ(処理)とセンサーフュージョン用である。これらセンサーの1つ以上は、遠距離およびノイズクリーンアップ用のマイクで、(AIを活用した)ノイズリダクションに最適である」と述べている。
Syntiantは、「今回の資金調達は、第3世代のNDPコアの展開を加速し、ソフトウェア開発を継続するために使用する」と述べている。第3世代の製品の発売は2023年を予定している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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