大手半導体メーカー各社が、2022年に入ってから続々と大規模投資を行っている。ようやく半導体不足が緩和される頃には、半導体バリューチェーンはこうした大規模投資のおかげで、大きな利益を享受できるようになるだろう。半導体不足のさらなる軽減の他、新たな雇用の創出や、製造装置の需要増加、半導体設計イノベーションの加速などが期待される。
大手半導体メーカー各社が、2022年に入ってから続々と大規模投資を行っている。ようやく半導体不足が緩和される頃には、半導体バリューチェーンはこうした大規模投資のおかげで、大きな利益を享受できるようになるだろう。半導体不足のさらなる軽減の他、新たな雇用の創出や、製造装置の需要増加、半導体設計イノベーションの加速などが期待される。
以下に、最近行われた投資の一部を取り上げてみたい。
これら合計2490億米ドルに達する膨大な投資により、半導体エコシステム全体において切望されているサポートが提供されることになるだろう。
エコシステム全体の半導体生産能力を増強するためには、今後2〜3年を要するとみられるが、自動車やスマートフォン、消費者向け技術などの分野にとっては良い知らせだといえるだろう。これらの業界では、半導体不足によるダメージが他の分野よりも深刻なため、製品販売に遅れが生じ、収益が数十億米ドル規模で減少している。
同業界では、新たな生産能力の稼働開始に伴い、必要としていた標準チップだけでなく、新しい特性/機能性を備えた新型チップなども容易に入手できるようになるだろう。実際に、TSMCのCFO(最高財務責任者)を務めるWendell Huang氏は、「2022年の設備投資費400億〜440億米ドルのうち、70〜80%の資本予算を、2nm/3nm/5nm/7nmなどの最先端プロセス技術に対して割り当てる予定だ」と述べている。
最近の投資により、半導体製造装置や、その装置を稼働させるために必要な熟練労働者などに対する需要が増加するとみられる。例えば、Intelがオハイオ州の製造工場に200億米ドルを投じる予定であると発表した際には、計8カ所の最先端工場全体で最大1万人の雇用が創出される見込みだと報じられていた。
また欧州でも同様に、ドイツのザクセン・アンハルト州マクデブルクの工場建設によって創出される雇用は、建設工事で7000人、工場の正社員が3000人の他、サプライヤー/パートナー全体では数万人規模が見込まれている。
半導体顧客企業にとっては、複数のサプライヤーの生産能力を利用できるようになると、調達先の選択肢の幅も広がる。通常、複数のサプライヤーが存在すれば、競争力が高まり、サプライチェーンのリスクも低減することができる。メーカー各社は、万が一サプライヤーの1社に予期せぬ問題が生じたとしても、そこからの回復が可能な柔軟性を高められるようになる。
これらの新工場が今後2〜3年以内に稼働を開始すれば、利用可能な生産能力が増えることになるため、世界各国の企業は今すぐ計画を立て始める必要がある。製造メーカーや機器メーカーにとって、過去数年間の過ちを繰り返さないためには、こうした生産能力を早い段階で確保し、将来の計画/予測にうまく組み込んでいくことが極めて重要だ。
その一方で半導体業界は、これらの工場が稼働を開始した時に、熟練労働者を確実に確保するための方法を模索する必要がある。現在多くの業界で、既に人手不足が生じている。半導体製造分野では、かなり専門的な技術に精通した人材が必要だ。メーカー各社が、確保可能な熟練労働者の数を増やすためには、例えばトレーニングや、STEMプログラム、採用活動など、さまざまな方法があるが、今すぐに実行する必要がある。
最近の投資は全般的に、半導体エコシステム全体にとって素晴らしいニュースだといえるだろう。製造施設が今後数年以内に稼働を開始することによって、半導体不足を解消していく上でどのようなサポートが提供され、機器メーカー各社がどのように売上高を増加させていくのかをこの目で見られるのは、非常にワクワクすることではないだろうか。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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