SiFiveとBrainChipはパートナー提携により、両社製IPの組み込みAI(人工知能)向けSoC(System on Chip)設計における互換性を実証していくことを明らかにした。
SiFiveとBrainChipはパートナー提携により、両社製IPの組み込みAI(人工知能)向けSoC(System on Chip)設計における互換性を実証していくことを明らかにした。既に、BrainChipのニューロモーフィックプロセッシングユニット(NPU:Neuromorphic Processing Unit)IP(Intellectual Property)を、SiFiveのRISC-VホストプロセッサIPとの連携によって機能させるデモを披露している。
BrainChipのNPUプロセッサIPは、SNN(スパイキングニューラルネットワーク)を加速させることが可能だ。同社のニューロモーフィックプロセッサSoC(System on Chip)「Akida」にも搭載されている。このIPは、カメラなどのさまざまな種類のセンサーからの入力を分析することにより、リアルタイムのアプリケーションで、超低消費電力で分析を行うことができるという。
BrainChipは最近披露したデモの中で、Akidaチップを自動車に搭載して運転者を検知することにより、運転者の顔と声を同時に認識している。必要とされる消費電力量は、キーワードスポッティングが600μW、顔認識が22mW、運転者を検知するために使う視覚ウェイクワードが6〜8mWだという。
RISC-VプロセッサIPのプロバイダーであるSiFiveは、エッジデバイスのAIワークロード向けに最適化されたベクトル拡張を備える、マルチコア対応RISC-Vプロセッサ「Intelligence」ファミリーなどを提供する。
SiFiveでプロダクト部門担当バイスプレジデントを務めるChris Jones氏は、米国EE Timesのインタビューの中で、「BrainChipは、AIアルゴリズムを独自に実行することができるが、大規模システムに移行する場合は、ホストプロセッサが必要になる。スケジューリングだけしか実行しないホストプロセッサや、実際にAI処理を行うホストプロセッサなどを選ぶことが可能だ。これこそが、SiFiveの製品の参入分野である」と述べている。
またJones氏は、「エッジAI向けSoC設計では、AIワークロードは通常、ホストプロセッサとベクトルプロセッサ、AIアクセラレーターとの間で分割される。一部のエッジワークロードは、専用のAIアクセラレーターよりも汎用プロセッサで処理する方が適している」と続ける。
「BrainChipにとって、業界リーダー各社との協業により、顧客企業にシームレスなインテグレーション体験を確実に提供することは、非常に有益である。BrainChipがホストプロセッサ上で動作可能な必須ソフトウェアを提供すれば、エンドユーザーが自社製品や当社の製品を簡単に統合できるようになるからだ」(Jones氏)
Jones氏は、「これまでに実現してきた取り組みは、ほんの一部にすぎない。われわれは現在、BrainChipのIPとSiFiveのRISC-Vアーキテクチャとの互換性を実証することに成功したところだ」と説明する。両社は、今後も継続的な協業体制を構築することにより、ソフトウェアおよびハードウェアIP統合の実現に向けて取り組んでいく考えだ。
さらに同氏は、「将来的に、野心的な計画を実行するつもりだ」と述べる。「AIや画像処理においてベクトル処理が注目されるようになり、SiFiveはここ1年で、ベクトルプロセッシングを市場に投入し、大きく前進した」(同氏)
SiFiveは、同社のホストプロセッサIPと互換性のある製品を持つAIアクセラレーターIPプロバイダーのエコシステムを構築することも、視野に入れている。「BrainChipとの協業は排他的なものではない。BrainChipは当社が公表した最初のパートナーだが、他にも多くのプレイヤーと交渉している」とJones氏は語った。
「われわれは、斬新な技術を持つ人々とのパートナーシップを積極的に模索している。IPやチップを開発する企業にとって、プラットフォームとしてのRISC-Vは無視できない存在のはずだ」(同氏)
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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