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» 2022年05月10日 09時30分 公開

東京大ら、トポロジカル導波路の広帯域化を可能に光回路技術に新たな可能性

東京大学と慶應義塾大学、電磁材料研究所の研究グループは、ENZ特性を持つ磁気光学材料を用いることで、帯域が広いトポロジカル導波路を実現できることを明らかにした。光回路のさらなる高密度高集積化が可能となる。

[馬本隆綱,EE Times Japan]

従来の1000倍以上という広い波長帯域で動作可能

 東京大学と慶應義塾大学、電磁材料研究所の研究グループは2022年4月、ENZ(Epsilon-Near-Zero)特性を持つ磁気光学材料を用いることで、帯域が広いトポロジカル導波路を実現できることを明らかにした。光回路のさらなる高密度高集積化が可能となる。

 チップ上にさまざまな光部品を集積した光回路は、新しい情報処理システムやセンサーなどへの応用が期待されている。この光回路を実現する上で課題となっているが、光部品を接続する光導波路である。十分な特性を得るためには作製時に生じる構造揺らぎや、不完全性などによる反射を大幅に抑制しなければならない。

 そこで注目したのがトポロジカル光導波路である。一方向のみに光が進む「カイラルエッジ状態」と呼ばれる特殊な光状態を活用することで、ゆらぎや欠陥に強い安定した光導波路を実現できる。ところが、光回路に応用可能な広帯域で機能するカイラルエッジ状態を実現するのは極めて難しかったという。

 研究グループは今回、磁気光学材料と半導体からなる単位構造を周期的に配列した三角格子フォトニック結晶に注目した。磁気光学材料の誘電率を変化させた時のフォトニックバンド構造を数値解析によって求めることにした。解析では、ナノグラニュラー材料に相当する磁気光学効果の大きさを仮定した。

 この結果、磁気光学材料の誘電率が下がると、カイラルエッジ状態が存在し得る波長幅は大きく拡大することが分かった。特に、誘電率が0.01の磁気光学材料では、その波長幅が光通信波長1550nmにおいて約70nmとなった。この値は、従来の1000倍以上という広い波長帯域で動作可能なことを示すものだという。

左はフォトニック結晶の模式図、右は磁気光学材料の誘電率とカイラルエッジ状態を用いたトポロジカル光導波路の動作波長幅の関係 出所:東京大学他

 また、導波路構造について分散曲線の計算を行った。この結果、波数0に対して非対称な分散曲線を持つカイラルエッジ状態が存在することを確認した。カイラルエッジ状態を用いた導波路における光伝搬の様子のシミュレーションも行った。これにより、「欠陥があっても反射なく光が導波をする」ことや、「磁気光学材料の誘電率が小さい場合にその安定性が向上する」ことも明らかとなった。

左はカイラルエッジ状態の存在を示す導波路構造の分散関係、右は欠陥が導波路上に存在する場合の光伝搬の様子。誘電率が小さいほど乱れは少ない 出所:東京大学他

 今回の研究成果は、東京大学先端科学技術研究センターの劉天際(Tianji Liu)特任助教(研究当時)や岩本敏教授、慶應義塾大学の太田泰友准教授および、電磁材料研究所の小林伸聖主席研究員と池田賢司主任研究員らによるものである。

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