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パワーエレクトロニクス最前線 特集

「どんな時も生産を維持」、ロームが筑後工場SiC新棟を公開量産開始は2022年12月

ロームは2022年6月8日、SiCパワーデバイスの製造拠点となるローム・アポロ筑後工場(福岡県筑後市)に完成した新棟(以下、SiC新棟)の開所式を開催した。

» 2022年06月09日 10時30分 公開
[村尾麻悠子EE Times Japan]

 ロームは2022年6月8日、SiCパワーデバイスの製造拠点となるローム・アポロ筑後工場(福岡県筑後市)に完成した新棟(以下、SiC新棟)の開所式を開催した。

ローム・アポロ筑後工場 SiC新棟の全景[クリックで拡大] 出所:ローム

 SiC新棟は2020年12月に完成。地上5階建てで、2階と4階にクリーンルームがある。SiC新棟やクリーンルームの延床面積などは非公開。建物と付帯設備の投資額は200億円である。量産は2022年12月に開始する予定で、まずは電気自動車(EV)や産業機器向けの第4世代パワー半導体の生産を始める。

SiC新棟 開所式の様子。左から、ローム・アポロ 取締役工場長の徳永孔二氏、福岡県商工部 産業特区推進室 室長の吉永正樹氏、ローム・アポロ 代表取締役社長の辻辰雄氏、ローム 代表取締役社長の松本功氏、京都大学名誉教授でSiCアライアンス会長を務める松波弘之氏、ローム 常務執行役員 CSO兼経理本部長の伊野和英氏

 SiC新棟では使用する電力の100%を再生可能エネルギーでまかなっている。自家発電の割合はわずかで、九州電力や海外からの調達がほとんどを占める。自家発電は増やしていくが、半導体の製造には多大な電力を消費するので、今後も安定的な外部調達が主要になる見込みだ。

あらゆる災害への対策を強化

 SiC新棟は、火災、地震、浸水などの自然災害への対策を強化した工場になっている。免振構造を採用した他、自治体のハザードマップを基に「100年に一度の大雨」を考慮してフロア高さを設定し、浸水対策を強化した。火災予兆システムやガス消化システムも完備している。自然災害が発生した際、長時間にわたる停電時でもクリーンルームの陽圧を維持できる必要最低限の電力を、発電機で供給できるようにした。ロームは「災害に強く、どんな時も生産を止めない工場の実現を目指した」と強調する。

左=SiC新棟の地下では、一部の免振構造が見られるようになっている/右=地震時のエネルギーを吸収する積層ゴム。60cm変形しても建物をしっかり支えることができるという[クリックで拡大]
SiC新棟クリーンルーム内部のイメージ写真。生産設備が全て導入された際のイメージを表している(2022年6月8日は、報道機関による写真撮影は禁止だった)。現在は順次、設備を導入している段階で、現在は全体の約4割の装置が導入済みだという[クリックで拡大] 出所:ローム

 SiC新棟では、人手に頼らない完全自動化システムを実現している。ローム・アポロ 取締役工場長の徳永孔二氏は、「強固なBCM(事業継続マネジメント)体制を整備し、安心と安全を実現した工場で、SiCパワーデバイスの中長期的な需要に対応できる生産体制を整えていく」と強調した。

ローム 代表取締役社長の松本功氏

 ローム 代表取締役社長の松本功氏は、「半導体の需給がひっぱくしている現在の状況は、われわれにとっては追い風となっている。また、世界的な潮流であるカーボンニュートラルでは、アナログ半導体やパワー半導体が重要な役割を担っていくとされており、特にSiCパワー半導体では、当社も多大な需要をいただいている状況だ。ロームはSiCパワー半導体を注力分野と位置付け、積極的に投資を行っていく。筑後工場のSiC新棟はまさにその代表例といえる」と語った。

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