自動車やその他の車両の電動化に向けた動きは、Wolfspeedの需要を後押ししている。Felton氏は、世界中の自動車メーカーを訪ねた後、General Motorsおよび高級EVメーカーのLucidとパートナー契約と結んだ。
WolfspeedのパワーMOSFETは、EVの走行距離や性能、充電時間に重要となるインバーターに使用される。同社では、太陽光エネルギー向けのインバーター事業でも成長の兆しが見られる。Wolfspeedの2021年の売上高は前年から42%増加したが、それでも需要に追い付いていない。
Felton氏は、「今後5〜10年は需要を追いかけることになる。当社は、ニューヨーク州に大規模な工場を建設した。工場のキャパシティーは4年後には一杯になるはずだ」と述べている。
Wolfspeedが今回発表した投資を決断した背景には、最近成立した米国CHIPS法によってインセンティブが提供されることがある。ただし、Felton氏によると、連邦政府のインセンティブは、州政府や地方自治体が最終合意を締結するために提供する額より小さいという。
同社は、ニューヨーク州で約10億米ドルの地方税優遇措置を受けられる可能性が高い。Wolfspeedの50億米ドルのプロジェクトではおそらく、地方税のインセンティブがCHIPS法のインセンティブの4倍になる。
同氏は、「地方自治体から10億米ドルのインセンティブを受けられるとすれば、CHIPS法では2〜3億米ドルを期待できるだろう」と述べている。
Felton氏によると、米国のインセンティブは、明らかに工場建設の機運を高めているという。
EVや太陽光発電市場の見通しは明るいものの、将来的には原材料不足によって成長が制約される可能性がある。
Felton氏は、「半導体業界内だけでなく、他の業界でも間違いなく競争が起こり得る。当社は最近、サプライチェーンチームを大幅に強化した。原材料の供給に関して多くの企業と長期契約を結べたことに非常に満足している」と語る。
米国政府が最近発表した中国へのワイドバンドギャップ材料の輸出規制によっても、成長が制約される可能性がある。米国の規制には、酸化ガリウムとダイヤモンドの基板が含まれる。Wolfspeedは、SiCとGaNの材料を製造している。
Felton氏は、「成長が制約される可能性があるとはいえ、世界中でEVやソーラーパネルの需要は十分にある」と述べ、「このように健全な設計需要が見込まれるのは喜ばしいことだ。当社はこうした需要に備えて、戦略の転換に踏み切った」と付け加えた。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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