TDKは2022年10月25日、同社初になる150℃対応の車載用樹脂シールドパワーインダクター「VLS5030EX-Dシリーズ」を開発し、量産を開始したと発表した。外装樹脂の変更によって定格電流の高い直流重畳特性も実現。PoC(Power Over Coax)やADAS(先進運転支援システム)、電動パワーステアリングなどの各種車載アプリケーション向けで採用を狙う。
TDKは2022年10月25日、同社初になる150℃対応の車載用樹脂シールドパワーインダクター「VLS5030EX-Dシリーズ」を開発し、量産を開始したと発表した。外装樹脂の変更によって定格電流の高い直流重畳特性も実現。PoC(Power Over Coax)やADAS(先進運転支援システム)、電動パワーステアリングなどの各種車載アプリケーション向けで採用を狙う。
車載アプリケーション用のフェライトコイルにおいて、150℃対応領域の製品はフェライトシールドタイプが主流となっている。しかし、クルマの電動化の加速によって使用する部品点数が増加する中、少しでもコストを抑えたいという要望から、既に125℃対応領域で採用が進んでいるのと同様に、150℃対応領域においても今後、樹脂シールドタイプの需要拡大が見込まれるという。TDKは今回、この需要を見据え、同社初になる150℃対応の樹脂シールドコイルとしてVLS5030EX-Dシリーズを開発した。
下図は、VLS5030EX-Dシリーズの特長をまとめたものだ。
VLS5030EX-Dシリーズは使用温度範囲−40〜+150℃で、車載用受動部品に対する認定用信頼性試験規格のAEC-Q200 Rev.Dに準拠。同社はまずインダクタンス4.7μHの製品から量産を開始し、今後1μ〜150μHの製品も順次生産開始予定という。なお、小型化が進む車載アプリケーションに向け、サイズは5030(5.3mm x 5.0mm x 3.0mm max)と、従来品(5045または6045サイズ)より小型になっている。
VLS5030EX-Dシリーズは、外装樹脂に金属磁性粉を使用したことで、定格電流の高い直流重畳特性を実現したことが最大の特長だという。具体的には、4.7μHのIsat(直流重畳定格電流)3.3Aは従来品と比較して約6%アップしている。同社の説明担当者は、「インダクタンスの直流重畳特性は雰囲気温度が上昇しても悪くなるが、150℃対応するにあたり、金属材料であれば高温でも特性がそれほど下がらず、底上げが図れるということで外装樹脂を変更した」と説明していた。
従来品を含め同社VLS-EXシリーズでは、巻線ワイヤと外部電極との継線に溶接工法を用いていることから、ハンダ接合品のようにリフローや高温使用時に接合状態が変化(ハンダの再溶融)することのない、「ハンダが溶けるような温度程度ではびくともしない構造」(説明担当者)となっており、高信頼性を実現しているという。
VLS5030EX-Dシリーズのサンプル価格は1個50円(税別)で、当初は月10万個を生産する予定だ。
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