2022年6月に開催された「VLSIシンポジウム」の講演のうち、最先端ロジック半導体に焦点を当てて解説する。ASMLが2023年から本格的に開発を始める次世代EUV(極端紫外線)露光装置「High NA」が実用化されれば、半導体の微細化は2035年まで続くと見られる。
2022年6月13日〜17日に、VLSIシンポジウム2022が開催された。コロナ禍の2020年と2021年は完全なバーチャル開催となったが、ことしはHilton Hawaiian Villageホテルでのリアル+オンデマンドのハイブリッド開催となった。
そして今回も、2020年および2021年と同様に、ほぼ全ての発表スライドがダウンロードできるようになっていた。スライドの数は、Technology とCircuitのレギュラー発表だけで198件あり、プレナリートーク、ワークショップ、ショートコースを加えた合計では約250件に上る。
これは夢のようでもあるが、情報の洪水に溺れることになるため、悪夢のようでもある。オンデマンドの視聴期間は8月末までだったが、それでも約250件全てを視聴することは不可能だ。そのため、あらかじめ狙いを定めて視聴せざるを得なかった。
では、どこに狙いを定めたか?
筆者は「微細加工研究所」と名乗っているくらいであるから、微細加工に最も関心がある。従って、半導体の微細化に関する発表、特に最先端のロジック半導体の発表を中心に視聴した。
本稿では、その概要を紹介したい。結論を先に述べると、ASMLが2023年から本格的に開発を始める次世代EUV(極端紫外線)露光装置「High NA」が実用化されれば、半導体の微細化は2035年まで続く。それに伴って、先端ロジック半導体のトランジスタの構造や微細配線の材料が変わる。そして、2次元の微細化と、3次元に半導体を積層する「3D IC」が補完し合うことにより、ムーアの法則は2040年まで続くと予測される。
1997年から本格的に開発が始まったEUV露光装置は、22年の歳月を経て、TSMCが2019年に、世界で初めて「N7+」の生産に量産適用した(図1)。N7+ではEUVが使われたのは孔パタンだけだったが、2020年に量産が始まった「N5」には配線層にもEUVが使われた。そして、2022年第4四半期には、よりEUVの適用レイヤーの多い「N3」の量産が立ち上がると報道されている。
さらに、2024年以降の“Future Nodes”に対しては、“High NA EUV Development”と書かれている。ここで、High NA EUVとは、現在量産に使われているEUVのレンズより大口径のレンズを使って、より微細なパタンを解像するための次世代版EUVである。
現在、オランダのASMLは、レンズの開口数が0.33の「NXE」と名付けられたEUVを先端半導体メーカーに供給している(図2)。NXEシリーズとして、2020年に3400C、2021年に3600Dがリリースされ、その後も、2023年に3800E、2025年以降に4000Fが出荷されることになっている。
これと並行して、レンズの開口数が0.55の次世代EUVとして「EXE」シリーズの開発が2023年から始まる。まず、ASML内にFabを開設し、EUVに関係する装置メーカーや材料メーカーが集結して、R&D装置のEXE:5000の開発が行われる。そのR&D機は2024年に出荷されるが、恐らくTSMC、Samsung Electronics、Intelなどの先端半導体メーカーが量産に使うのは、2025年に出荷を予定しているEXE:5000Bからであろう。
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