EUVを使った半導体の微細化のロードマップは、既に2020年のIEDMでimecが示している(図3)。それによると半導体の微細化は、次の4段階で進む。
1) 0.33NAのEUVによるシングル露光 → 32〜28nmピッチ
2) 0.33NA EUV+マルチパターニング → 24〜20nmピッチ
3) 0.55NA(High NA)EUVのシングル露光 → 18nmピッチ位以降
4) 0.55NA(High NA)EUV+マルチパターニング → さらに微細なピッチ
このようなシナリオで、半導体の微細化が進んだ場合、スローダウンはしつつも、2035年まで半導体の微細化が続くことを、2022年のVLSIシンポジウムでASMLが示した(図4)。
現在最先端のTechnology NodeはN5で、最も微細な配線のピッチは32nmである。恐らく、High NAは、2025年の「N2」(微細配線ピッチ24nm)辺りから登場すると思われる。そして、2035年にはそのTechnology Nodeが「A5」となり、微細配線ピッチは15nmになることが示されている。なお、Technology Nodeの“A”はオングストローム(Å)を意味するものと思われる。
ことし2022年から13年後の2035年まで半導体の微細化は続く。もちろんこれはHigh NAが計画通りに実用化されたらの話ではあるが、この図3が、2022年のVLSIシンポジウムの中で、筆者にとって最も印象的なスライドとなった。
2019年にEUVが微細化の扉をこじ開けた。そして、High NAが登場すれば、半導体の微細化は2035年まで続く。その微細加工技術を使って、先端ロジック半導体のトランジスタや微細配線は、どのように進化を遂げるのだろうか?
図5は、2020年のIEDMでimecが示したロジック半導体のトランジスタや微細配線のロードマップである。トランジスタ構造は、3nmから2nmにかけてFinFETからGate-All-Around(GAA)構造のNanosheetsに変わる。そして、フォークのような形状のForksheetsを経て、1.5nm以降にpMOSとnMOSを縦に形成するComplementary FET(CFET)となることが示されている。さらに1nmとそれ以降については、2D channelsという全く異なるトランジスタ構造になると予測している。
ここで、CFETは、(筆者の記憶によれば)2017年頃からimecが発表し始めたCMOSであるが、このような複雑な構造をどうやって形成するのか、このCMOSを数十〜数百億個以上集積したロジック半導体は本当に動作するのか、などの疑問を持っていた。しかし、2017年以降もimecは毎年、CFETの発表を継続してきた。ことしのVLSIシンポジウムでもimecは、N3からNanosheetsになり、Forksheetsを経て、「A7」からCFETになるという新たなロードマップを発表した(図6)。
そして、とうとう、そのCFETが、TSMCのトランジスタのロードマップに記載された(図7)。研究機関であるimecがロードマップにCFETを掲載していることと、実際にファウンドリーとしてロジック半導体の大量生産を行っているTSMCが自社のロードマップにCFETを乗せたこととは意味合いが大きく異なる。筆者は、TSMCが、GAAの次にCFETを採用する覚悟を決めたのだろうと感じた。その時期は、imecのロードマップを参考にすればA7からで、2030年以降になると思われる。
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