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半導体製造の米国回帰、CHIPS法がエンジニアに与える影響は短期、長期の影響を考察(1/2 ページ)

米国EE Timesは2人の設計エンジニアに、CHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)が米国のエンジニアに短期的および長期的に与える影響についての見解を聞いた。同法は、設計エンジニアリングプロセスを2020年以前の状態に戻すのに役立つだけなのだろうか。それとも、半導体の設計と製造プロセスに大幅な変革をもたらすような大きな変化が進行しているのだろうか。答えはその中間にあった。

» 2022年11月01日 10時30分 公開
[C.D. McGradyEE Times]

 2022年8月9日(米国時間)にジョー・バイデン大統領の署名により成立したCHIPS法(正式名称:CHIPS and Science Act)は、国内半導体生産の促進に向けて520億米ドルを投じる計画が盛り込まれており、半導体メーカーからエンジニア、生産チームまで、半導体エコシステムに大きな影響を与えるものだ。

 米国EE Timesは2人の設計エンジニアに、同法が米国のエンジニアに短期的および長期的に与える影響についての見解を聞いた。同法は、設計エンジニアリングプロセスを2020年以前の状態に戻すのに役立つだけなのだろうか。それとも、半導体の設計と製造プロセスに大幅な変革をもたらすような大きな変化が進行しているのだろうか。答えはその中間にあった。

サプライチェーン混乱は落ち着いたか?

 以前に「サプライチェーン専門家がCHIPS法を分析」で取り上げたように、世界の半導体サプライチェーンは過去2年間、非常に大きな混乱を経験した。特に半導体は、あらゆる市場と接点がある、独自に相互接続されたインフラを有している。

Arrow Electronicsの元アプリケーションエンジニアで、現Nimble Gravityのビジネスエンジニア、Zachariah Wendt氏 出所:Nimble Gravity

 米国の半導体/電子部品ディストリビューターArrow Electronicsの元アプリケーションエンジニアで、現在は米国のITコンサルティング企業Nimble Gravityのビジネスエンジニアを務めるZachariah Wendt氏は、「1つの部品が不足すれば、1つの業界/市場だけでなく、多くの市場に波及する可能性がある。例えば、MOSFETメーカーが材料不足に陥った場合、自動車業界やソーラー業界、コンピュータ業界に影響が及ぶ可能性がある。あなたの町が新しいコンサート会場を建設中に突然、プロジェクトを完成させるためのサウンドシステムを入手できなくなるかもしれない。これは数日や数週間ではなく、数カ月から数年単位の遅れになるかもしれない」と述べている。

 米国の電子部品ディストリビューターAllied Electronicsのアプリケーションエンジニアを務めるMiguel Gudino氏は、「部品の調達能力は当社の事業に影響する。当社の高度なオートメーション製品の多くは、デバイスを機能させるための重要な半導体を搭載している。この問題に対処するために、当社は頻繁に代替部品を探す必要があった。顧客が当初は想定していなかったような他のブランドの部品を採用(クロスオーバー)することもあった。幸いなことに、当社はクロスオーバーできるブランドをたくさん持っているが、適切なクロスオーバーであるかどうかを調査するためのエンジニアリングタイムが増えてしまうことになる」と述べている。

Allied Electronicsのアプリケーションエンジニアを務めるMiguel Gudino氏 出所:Allied Electronics

 半導体業界の大手企業は、ディストリビューターであれ、エレクトロニクスメーカーと直接関係のある機器メーカーであれ、この嵐を乗り切ることができているが、小規模な企業の場合、部品の製造能力の寸断が事業を完全に崩壊させる可能性がある。

 経営コンサルティング会社Deloitteの調査によると2021年半ば、一部の企業では半導体部品のリードタイムが20〜52週間となっていた。この期間は小規模な企業にとって耐えられるものではない。同じ調査では、2022年末にはリードタイムは10〜20週間に近づくと予想されている。状況が改善されるとはいえ、完全に安定するわけではない。では、CHIPS法はこの期間に影響を及ぼすのだろうか。

 CHIPS法は第一に、Intelのような大規模な組織を支援することを主な目的としている。つまり、成長の取り組みを食物連鎖のトップに集中させることで、中小企業を含む市場全体に大きな影響が及ぶという考えに基づいているのだ。

 Wendt氏は、「半導体業界は相互に密接に関連しているため、マクロスケールの変化が連鎖し、全体に影響を及ぼす。約100億米ドルという多額の資金は、現在の技術だけでなく、SiC(炭化ケイ素)のような新しい半導体技術の製造能力を高めることを目的としている。こうした投資がもたらす“トリクルダウン“の効果は、広範囲に及ぶと予想される」との見解を示す。

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