京都大学とスタンレー電気の研究グループは、高い出力とビーム品質動作を両立させた、「青色GaN系フォトニック結晶レーザー」を開発した。車載用部品の加工や高輝度照明、水中(海中)LiDARなどの用途に向ける。
京都大学大学院工学研究科の野田進教授とメーナカ デ ゾイサ講師、石崎賢司特定准教授および、スタンレー電気の江本渓氏と小泉朋朗氏らによる研究グループは2022年11月、高い出力とビーム品質動作を両立させた、「青色GaN系フォトニック結晶レーザー」を開発したと発表した。車載用部品の加工や高輝度照明、水中(海中)LiDARなどの用途に向ける。
研究グループは、研究開発に成功した要因として、主に3つのポイントを挙げた。1点目は、適切なデバイス層構造や共振器サイズにすることで、光の漏れ(面内損失)を低減したことである。これまで開発してきたデバイスの層構造は、解析結果によりデバイス面内方向の光の漏れ(面内損失)が極めて大きく、しきい値電流密度が高くなって、十分な性能が得られなかったという。
2点目は、GaN系フォトニック結晶形成法を確立したことである。従来はSiO2層を下敷きとして利用し、フォトニック結晶を形成していた。今回は、有機金属気相成長法(MOVPE法)の成長条件を最適化し、GaNの結晶成長を制御することで、SiO2を用いずに空孔を形成する手法を開発した。この結果、極めて均一で高い品質のフォトニック結晶を形成することが可能になったという。
3点目は、正方格子・2重格子フォトニック結晶構造を採用したことである。GaN系フォトニック結晶形成法を確立したことで、高出力化が期待できる正方格子構造を採用できたという。また、2重格子フォトニック結晶の概念も取り入れた。さらに、電極構造を見直した。これによって光取り出し口を電極に設けることが可能となり、光取り出し効率を向上させた。
これらの技術を活用してデバイスを試作した。この結果、青色の波長でワット級の出力と、ビーム拡がり角が0.2度以下というレーザー光の出射に成功した。
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