東京工業大学は、京都大学や大阪大学、東北大学の研究グループと共同で、無機化合物の基本的な結晶構造である「岩塩型構造」と「蛍石型構造」を共存させ、制御できることを発見した。環境浄化や人工光合成の実現に向けた、新しい機能性材料の開発につながる可能性が高い。
東京工業大学は2022年8月、京都大学や大阪大学、東北大学の研究グループと共同で、無機化合物の基本的な結晶構造である「岩塩型構造」と「蛍石型構造」を共存させ、制御できることを発見したと発表した。2つの基本構造を自由に組み合わせることができれば、環境浄化や人工光合成の実現に向けた、新しい機能性材料の開発につながる可能性が高いという。
無機化合物の基本的な結晶構造としては、「NaCl」などの岩塩型構造と「CaF2」などの蛍石型構造がある。また、蛍石型構造と似た構造を持つ物質として、ビスマス酸塩化物もあり、高効率で安定な光触媒材料として注目されている。ビスマス(Bi)と酸素(O)からなる蛍石層(Bi2O2層)と塩素層などが積層した層状物質で、層の組み合わせや積層の順序によって、さまざまな物質群が合成できるという。
Bi2O2層はBiが2列ある二重(n=2)蛍石層だが、研究グループはこれまで、蛍石層の厚みを増やした三重(n=3)蛍石層の光触媒を開発してきた。蛍石層の厚みを制御すれば新たな物質を開発することができるものの、これまでビスマス酸塩化物では、n=3が最大となっていた。
研究グループは今回、Bi12O17Cl2というビスマス酸塩化物に着目し、電子顕微鏡やX線および中性子回折、単結晶X線回折などの手法を組み合わせ、結晶構造を解析した。この結果、Bi12O17Cl2は、Bi-O層(Bi6O8.5層)とCl層からなる層状構造であることを明らかにした。
特に、Bi-O層は六重(n=6)で最も分厚いことが分かった。また、Bi-O層内には、蛍石型に似た蛍石ユニットと、部分的に岩塩型のような構造をした岩塩ユニットが共存し、波を打った構造になっているという。
さらに研究グループは、低温でBi12O17Cl2にフッ素挿入反応を行い、新規化合物Bi12O17-0.5xFxCl2(4<x<6)を合成することに成功した。合成した酸フッ化塩化物の構造を解析した結果、Bi-Oブロックでは波を打ったような構造のひずみはなくなり、層間方向に蛍石層と岩塩層が交互に積層する構造に再配列していることを確認した。
実験では、有機物分解に対する光触媒活性を測定した。構造を平たん化させることで、光触媒活性は最大6倍に向上したという。波を打ったような構造のひずみがなくなり、光を吸収することで生じた電子が、層内を流れやすくなったのがその要因と分析している。
今回の研究成果は、東京工業大学理学院化学系の八島正知教授と藤井孝太郎助教、京都大学大学院工学研究科の加藤大地助教、阿部竜教授、陰山洋教授、大阪大学大学院工学研究科の佐伯昭紀教授、東北大学大学院工学研究科の高村仁教授らによるものである。
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